あなたのところには次々といろいろなタスクが舞い込む。上司が「Aの件、来週月曜までに頼むよ」と言って、書類を置いていく。そこに後輩が「Bの件について相談に乗っていただきたいのですが……」と言ってやってくる。
そうこうするうち、上司から頼まれていた案件をついうっかり忘れてしまう。気づいたときには締め切りを過ぎていた……などということはないだろうか?

「うっかり忘れ」を減らす戦略的チェックリスト

質の高いアイデアを出したければ、発想を広げ、発想の数を増やさなければならない。
そして、発想の広さは次の3つによって決定づけられる。

発想の広さ = (1)情報量 × (2)加工率 × (3)発想率

“なんでそんなアイデアが出るの!?”と言わせる「戦略チェックリスト」入門

この中で、最もパフォーマンスに結びつきやすいのは、「(3)発想率」を高めることである。
しかし、僕たちは「頭の中にある潜在的なアイデア」の一部をついうっかり引き出し損ねてしまい、競合に先を越されることになる。ビジネスにおける敗北のほとんどは、このタイプのものである。

【参考:第1回】
“ヒット商品が出ない人”に共通する
「しまった!!」の敗北とは?

では、そうしたうっかり忘れを防ぐには、どんな手立てがあるだろうか?

発想における「うっかり忘れ」は、仕事の場面でついタスクが頭から漏れてしまうときの「うっかり忘れ」と、構造的には全く同じである。

それを避けるためには、メモ書きをするという人がほとんどだろう。タスクが複数ある場合は、箇条書き形式でそれらを書き留めておくはずだ。呼び名はいろいろとあるが、ここではこれをチェックリストと呼ぶことにしよう。

チェックリストがあることによって、僕たちは発想のモレを防ぐことができる。遠足に持っていくべきものだとか、新規クライアントと契約を結ぶべき際のフローだとか、ありとあらゆる場面で、チェックリストは活用されている。いかに僕たちがうっかり忘れをしやすいかということだ。

裏を返せば、チェックリストこそが、発想のモレを防ぎ、網羅的に広く考えるためのツールなのである。

優れたチェックリストに共通する「2つの条件」

では、どんなチェックリストをつくればいいだろうか?
優れたチェックリストの条件について考えてみよう。

たとえば、カレーパーティの買い物に必要なチェックリストとして、致命的な欠陥を抱えているのは、次のうちどれだろうか? 少し考えてみてほしい。

答えはである。チェックリストの目的は、発想のモレを防ぐことだった。その点でAはまず話にならない。このリストを持っていても、買い忘れを防ぐのには役立たないからだ。

Dのチェックリストは、「どんな飲み物を買えばいいのか?」が具体的になっていないという点で、やはりモレにつながり得る。たしかに「飲み物」の中にはビールも含まれるが、おつかいを頼まれた人が、酒が飲めない人であれば、ビールを買い損ねる可能性は高い。具体性の欠如も、やはり発想のモレにつながるのである。

一方、のようにダブりがあっても、少し混乱を招いてややこしいという点を除けば、特に大きな問題はない。なぜなら、これによって買い忘れが生じることはないからだ。
の優先順位についても、モレを防ぐという目的に照らした場合、じつは必要条件にはならない。「あったらいい」という程度のものである。

ここからわかるとおり、優れたチェックリストの条件は次の2つである。

・ 項目にモレがない
・ 項目ができるだけ具体的である

それでは、この2つの条件を満たすチェックリストは、どんなふうにつくればいいだろうか?

いきなり完璧なチェックリストはつくれない

いきなり網羅的なリストをつくることはまず不可能である。では、モレがない優れたチェックリストをつくるには、どうすればいいのか? 段階的に項目を分けていくしかない。

モレが出ないように項目を分割していくためには、明確な境界線が必要だ。
たとえば、「すべての自動車」を分解するときに、「高価格」というのは境界線としてはあまりにも曖昧である。これによって「高価格な車」と「高価格でない車」に分割しても、そこから漏れてしまう車が出てくる可能性がある。

“なんでそんなアイデアが出るの!?”と言わせる「戦略チェックリスト」入門

逆に、「200万円」を境界線にすれば、「200万円以上の車」と「200万円未満の車」とに分割することができる。さらにこれを「排気量1500cc」を境界線にして分けたとしても、モレが生じることはないし、項目はより具体的になる。

項目を繰り返し分解していくと、次第にツリー状に枝分かれしていく。枝の末端をずらりと並べれば、それは思考のモレを防ぐチェックリストになっているはずだ。

“なんでそんなアイデアが出るの!?”と言わせる「戦略チェックリスト」入門

たとえば枝の末端が10個あれば、それぞれについて仮説を考えていけばいい。そうすることで、僕たちは発想モレを防ぐことができるというわけだ。

(第9回に続く)