軽減税率よりは“マシ”な
財務省案
消費税を10%に引き上げる際の低所得者負担軽減に関する財務省案が、突然出てきた。買い物時に消費者が、消費税10%分を支払い、「酒類を除く飲食料品」に関しては、後から2%分を払い戻す仕組みだ。マイナンバー制度で希望者に配られる個人番号カードを、会計の際に店舗の端末にかざすことが必要となる。
筆者が知ったのは、9月5日土曜日の朝刊だが、その日の夕方、読売新聞社から、「財務省が出した、日本型軽減税率の案(以下、財務省案)に対するコメントをいただきたい」というメールと電話をいただいた。
当方も寝耳に水なので、記者から財務省案の内容を教えていただき、直ちに以下のようなコメントを伝えた。
1.財務省案は、これまで与党で検討されてきた(欧州型の)軽減税率案が行き詰まって出してきたものだろう。
内容的には、軽減税率より優れている。軽減税率は、生産者、卸、小売と、あらゆる取引段階で大きなコストを生じさせるが、財務省案は、小売段階だけとなっている。また、還付する者に所得制限を設ければ、軽減税率とは異なり、逆進性対策になる。
2.一方で、マイナンバーカードを活用すると言っても、1年目には2000万人程度のカード取得しか準備しておらず、また、カードを使うことに抵抗もあるので、現実性・実行可能性には疑問が残る。乗り越えるべき課題は山積している。
3.筆者はこれまで、低所得者への給付というカナダ方式が、簡素で手間もかからず優れている、と主張してきたが、種々議論の結果、財務省案には問題が多いということになり、カナダ型になる可能性も残されているのではないか。そのためには、政治論として、民主党案というハードルを乗り越える必要がある。
しかし、このコメントは、読売新聞社の社論に合わないということで、結局掲載されなかった。ちなみに、取材記者からは、丁重なお断りをいただいたのだが、コメントを求めておきながら、「自らの社論に合わないコメントは掲載しない」という読売新聞社の対応には、マスコミのあり方として、公平中立な報道という建前からしても、大いに疑問がある。