われわれは、“恐怖の生体実験”に
かけられている!

 翌10日の川内原発ゲート前の集会では、私もスピーチをしろと言われて、そこで話したのは、そのことです。

「明日にも制御棒を引き抜いて、川内原発を再稼働させようとしていますが、コントロールルームの内部で働いている九州電力の職員は、内心でこわくてならないのです。彼らは、われわれより危険性を知っています。つまり、自分たちの点検が充分ではないことを知っている。彼らは決して悪意があるわけではないが、大事故が起こらないように、心の中で祈っているだけなのです」と。

何千、何万とある部品と機器を組み合わせた巨大な装置が、原子力発電所である。4年3ヵ月も運転を止めていたのだから、必ず、大事故を起こす。塩分が飛び交う海岸線にあって、金属材料の腐食が、最もこわいのだ。

 私は若い頃、大企業で金属の腐食について研究していた人間なので、それがよく分ります。必死になって検査をしても、パーツごとのバラバラ検査では、運転中に発生する事故は、まったく予測できない。制御棒を抜いて、高温・高圧で運転して初めて、真のトラブルが分る。だから、「すぐにトラブルが起こる」と、みなに断言しました。

「内部で危険なことがあっても、九州電力は隠す。それが原発のおそろしいところである。つまり、再稼働によって、その恐怖の生体実験にかけられているのが、われわれである」と。

 しかし、ドシロウトの安倍晋三と麻生太郎は、九州電力社長・瓜生道明に対して「何としても再稼働しろ」と圧力をかけている。経営危機にある瓜生社長は、川内原発の所長に対して「何としても再稼働しろ」との命令を伝えている。こうして強引に、再稼働されてしまったのだ。だから、大事故は目前である。

最もおそろしい
桜島大噴火のトテツモナイ現況

 川内原発での大事故のシナリオは、具体的には、こうです。新聞を読んでいると、1万年単位で起こる巨大なカルデラ噴火のことばかり警告しているが、私がおそれているのは、そのような溶岩流ではなく、普通の大噴火である。

本連載シリーズ第2回で書いた通り、大量の火山灰が降りつもっただけで、電源喪失が起こり、フクシマ原発事故と同じ、悲惨な経過をたどるのである。

“恐怖の生体実験”に、<br />いつまでかけられるのか?<br />――八重洲ブックセンター本店での講演(1)

 つまり、左のグラフのように、川内原発から至近距離にある桜島の噴火が、2010年から毎年1000回以上も噴火している。

 一年は365日なので、毎日平均3回という異常な状態にある。
 去年(2014年)だけ噴火回数が半分に減ったが、逆に噴火の規模は、一昨年より大きくなっているのだ。それを警告する現実の出来事が、最近2回あった。

 第一は、川内原発再稼働直後に起こった「桜島の山体膨張」である。
 つまり地底から上がってくるマグマがどんどん増えて、桜島が太った。まぎれもなく大噴火の予兆である。

 そのため住民に避難勧告が出され、これはのちに解除されたが、マグマが消えたわけではない。いつでも大噴火する可能性を秘めた無気味な状態を今も続けている。