わずか22分でメルトダウンが起こる
恐怖の事実!

“恐怖の生体実験”に、<br />いつまでかけられるのか?<br />――八重洲ブックセンター本店での講演(1)

 その蒸気発生器の部分を拡大すると、左の図のように20メートル以上の高さ(つまり2メートルの巨人が10人分)もある装置で、内部には、半分あたりから下のほうに、細いパイプ(U字管を逆さにしたもの)がぎっしりつまっているのが見える。

 そのうち一本の細いパイプをさらに拡大すると、右側の図のようになる。原子炉からきた高温の熱水(赤色の部分)がパイプの中を流れ、その外側に薄水色で示した水が流れている。そして、外側の水が熱を受けて沸騰する。

 もし大地震が来て、この細管が破断すれば、どうなるか。

 勿論、原子炉の熱水がどっと噴出する。原子炉の運転条件は、フクシマ・タイプの沸騰水型では280~290℃で、70気圧だが、加圧水型では290~330℃と高温で、しかも圧力が、2倍以上の150気圧もある。

 このように沸騰水型に比べて、加圧水型は温度も圧力も高い状態で運転されている。配管破損による事故では、冷却水の噴出は、高温・高圧の分だけ激しくなり、メルトダウンに至る速度は加圧水型で格段に早くなる

 フクシマ原発事故では、ほぼ4時間後にメルトダウンが始まったと見られているが、ダイヤモンド書籍オンラインでの田中三彦さんとの対談で語られたように、「加圧水型原発では、わずか22分でメルトダウンが起こる」という恐怖の事実は、それが原因なのである。まさに一瞬で、大事故に突入するのだ。

 そのメルトダウンを引き起こす、この蒸気発生器の細管破断事故が、実際に日本で起こっているのだ。

 1991年2月9日に、関西電力の福井県・美浜原発2号機で蒸気発生器のギロチン破断事故が起こったのだ。
 あの時には、沸騰してはならない原子炉の水が沸騰し始め、原子炉の上の部分の水が失われ始めた。しかし、フクシマ原発事故と同じように、メルトダウンに突入しようとする寸前で、かろうじてそれを食い止めた。

 この大事故で明らかになったのは、蒸気発生器の細管は、絶えず破損している、という事実であった。その破損パイプを、定期検査の時に見つけては、栓をして、文字通り、綱渡りで使っていたのだ。

現在も、そうなのである!

 なぜなら、今回、再稼働にとりかかった川内原発1号機では、さきほどの図で、赤い部分のパイプが、直径21ミリ、厚さ1.3ミリしかない紙のように薄いインコネル(ニッケル・クロム・鉄の合金)製の金属管である。

 なぜ、そんなに薄い金属を使うのか? 
 なぜ、厚い頑丈なパイプにしないのか? 

 それは、熱交換機だから、薄くないと、相手側の水に熱を伝えられないからである。1台の蒸気発生器には、その頼りないパイプがほぼ3400本も走っている。川内原発には、蒸気発生器が3台あるので、合計1万1000本を超えるのだから、絶えず破損が起こっているのだ。

 1本でも破断すれば、連鎖的に破断し、炉心から水が失われ、たちまち大事故を引き起こす。

 なぜかって? 

“恐怖の生体実験”に、<br />いつまでかけられるのか?<br />――八重洲ブックセンター本店での講演(1)

 いいですか、150気圧の水が噴出すると、それは、水というより、鉄砲玉のような破壊力を持ったものだからだ。

 相手側の水との差圧を考えても、おそらく100気圧ぐらいの力である。
 その爆発的な噴出力を持った鉄砲玉が飛んできて、隣の細管が破損しないだろうか? それが、イギリスで起こったのである。

 ソ連でチェルノブイリ原発事故が起こった翌年、1987年2月、イギリスの高速増殖炉ドーンレイPFRの蒸気発生器細管のギロチン破断事故が起こった。

 その時、この図のように、10秒にも満たない短時間に、40本の細管がダダダダッと連鎖的に破断し、70本が損傷した。

 しかもこの重大事故は、しばらく隠されていたのだ。

 次回は、アメリカのカリフォルニア州のサンオノフレ原発で、蒸気発生器の細管が破損したため、原子炉が緊急停止し、放射性物質が大気中に漏れた事件を紹介する。