高校3年から「妄想」に苦しめられ
16年間の引きこもり生活へ
富山県に住む42歳の通称「月空」さんは、周囲との人間関係をうまく築くことができず、実家で16年間にわたって引きこもってきた。
高校3年生の頃から体調に異変を感じはじめた。自分の思考が抜き取られているかのように、周囲に悟られているような気がしたのだ。
「関係妄想(すべてのことが自分と関係あるもののように思える)です」
後に、精神保健福祉士(PSW)の資格を取得した月空さんは、そう当時の自分を振り返る。
その頃の月空さんは、そうした状況が異常なことなのに、周りに気づかれないよう、一生懸命、正常なふりをして生きてきた。
やがて、幻聴が聞こえるようになった。人と会うことが、ものすごく疲れる。それは、地獄のような苦しみだった。
大学までは頑張って出たものの、就職は無理だと断念した。
以来、何もすることがなく家にいる間は、午前4時頃就寝して、午後2時頃起床する昼夜逆転の毎日。ほとんどゲームやマンガに明け暮れた。
勉強も好きだったが、頭を使うことができなくて、1日1時間勉強すると、ヘトヘトになった。
昼間は周囲が気になって外出できず、夜になると自転車で出かけた。
ところが、会社員だった父親が定年を迎え、収入が減った。年金だけでは生活できなくなったことから、通院していた先で障害年金を申請することになったのだが、そのとき初めて「統合失調症」と診断されていることを主治医から教わった。
母親の怪我がきっかけで
家事の手伝い、ブログ開設へ
そんな「引きこもり」を脱するきっかけは、ある日、月空さんの母親が家の中でアキレス腱を切ったことにある。
元々、母親は人に尽くして助けたがるタイプだった。そこで、動きが不自由になった母親の家事を手伝いたいと思うようになったのだ。