「後継者不足」という経営課題

かしま・ていじ
セルム代表取締役社長 1998年に創業3年目の株式会社セルムに参加し、2002年取締役企画本部長に就任。今日では1000名を超えるコンサルタントネットワークの礎を築く。同社 常務取締役関西支社長を経て、10年に代表取締役に就任。一貫して「理念と戦略に同期した人材開発」を提唱し、次期経営人材の開発や人材開発体系の構築、リーダーシップ開発、組織開発などに携わる。升励銘企業管理諮詢(上海)有限公司 董事総経理 CELM ASIA Pte. Ltd. 取締役。

 ここ数年、企業の経営者から「後継者が見つからない」という話を聞くことが増えました。企業の規模を問わず、その数も10社や20社ではありません。結論から言うと、日本はいま、同時多発的な「リーダー欠乏症」に陥っています。なぜこのようなことになっているのでしょうか。

 日本経済が高度成長を続けていた時期は、様々な人材が育ちやすい環境だったと思います。伸び盛りのビジネスがどんどん生まれ、リーダー的存在になる人材の層が形成されやすかったのです。

 ところが、バブル経済が弾けて以降は、企業がコスト削減、人員削減に向かい、将来性よりも足元の数字や業績ばかりが重視される中で、付加価値を生むような“とんがった”人材はどんどん外に出てしまいました。

 その結果、付加価値を生まない平均的な人材のプールが企業の中で大きくなってしまった。そして今、後継者・リーダーとなれる存在が圧倒的に不足する事態が日本企業に同時多発的に起こっているのだと思います。

 つまり、経済状況の変化と、それに対応した人材育成をしてこなかったために、後継者となる人材のプールが不足してしまったことこそ「リーダー欠乏症の原因」です。

競争力低下を招く「社長の選び方」

 また、後継者が不足していることに加え、その「選び方」についても見直すべき点があります。

 深刻なリーダー不足という危機に直面している今も、多くの経営者が後継者に対し、「安心して自分のポストを渡せる人がいい」という感覚を持ち、現経営者が後継者を選ぶケースが圧倒的です。すると何が起きるか。

 後継者は「選んでもらった」ことに恩義を感じて、前の経営者のやり方を否定するような改革がなかなかできません。その手かせ足かせのために思い切った経営改革・構造改革ができないのです。それが日本企業の成長を阻む要因の1つとなっていると言えるでしょう。