プロ経営者として5年以上の間ミスミグループ本社の代表取締役社長等を務めてきた高家正行氏と、今年5月に『プロフェッショナル・リーダー』を上梓したアリックスパートナーズ日本共同代表の野田努氏。それぞれ経営プロフェッショナルと企業再生プロフェッショナルとしての立場から、日本企業に求められるリーダー像を語り合ってもらった。後編のテーマは、一流のリーダーになるための「3つの要素」について。(構成:谷山宏典)

プロのマネジメントスキルだけでは
一流のリーダーにはなれない

高家正行(たかや・まさゆき) 1985年慶應義塾大学経済学部卒業。三井銀行、A.T.カーニーを経て、2004年ミスミグループ本社に入社。経営統合した駿河精機(当時東証2部)の社長等を務め、08年ミスミグループ本社の代表取締役社長に就任。社長在任中には、北米金型メーカーの買収等も手掛ける。その後代表取締役副会長、顧問を経て15年3月退任。現在アリックスパートナーズ・シニアアドバイザー。

高家 私自身、30代半ばで銀行を辞めたとき、プロのマネジメントスキルを身につけ不振企業を再生させるような「プロ経営者」を目指し、そのために必要なスキルを身につけるためにA.T.カーニーで5年間、戦略系コンサルタントとしてキャリアを積みました。

その後、ミスミグループ本社に入り、同社の経営にたずさわる中で自分のリーダー像は徐々に変化していきました。

野田 どのように変わっていったのですか?

高家 不振企業の再生や海外企業の買収といった“有事”には、プロのマネジメントスキルが必要条件です。しかし、一流のリーダー、一流の経営者になるには、それだけでは足りないのではないかと。そして、私なりに一流になるための条件として3つの要素に思い至りました。

1つ目は、ここまで述べてきたようなプロのマネジメントスキルを理論だけではなく現場で実際に駆使して経営ができる、しかも有事に強い、という要素。まさに、「プロ経営者」です。2つ目が「アントレプレナー(起業家)」的な要素で、自らのビジネスをもって顧客に新たな価値を提供したい、社会を変えたい、という内から湧き出るような強烈なミッションを持っていること。

野田 アップルのスティーブ・ジョブズは、まさにアントレプレナータイプですよね。