なんかバランスが悪い感じ

 こうして再びそれぞれの店舗で話し合った。
 その間、はるかは宇佐美社長と話をすることにした。

「あの、社長、よろしいですか?」
「もちろん。いやあ、いい感じだね。何だか久しぶりに楽しいよ。ありがとう」
「いえいえ、これから結果につなげなきゃいけなので、まだまだです。それで、いくつか業態についてのお話をしたいのですが……」
「もちろん、いいよ。どんな感じ?」

「はい、まず『味樹園』のおすすめってなんですか?」
「うん、前にも話したとおり、うちはやっぱり創作系の焼肉だね。中でも一番人気なのが〈牛ロースのわさび醤油焼き〉かな。それと今から〈創作炙り握り寿司〉を売り出そうと思っている。炙ったお肉を使った握り寿司」
「なるほど、了解です。う~ん……」

「ん? どうした? 何か疑問がある?」
「はい。たしかに、この前食べて本当に美味しかったんですが……でも、それでいいんでしょうか?」
「と言うと?」
「やっぱり焼肉屋さんって牛タンとカルビなんじゃないかって思って。そこのお値打ち感というか……」

「たしかに、そのとおりだと思うよ。でも、これまでやってきて、そこの追求ってキリがないと思ったんだ。
 結局、仕入れ先を開拓するか、利益を削るかになるでしょ。だからこそ、うちのレベルはここって決めて、他にないような商品を強化したほうがいいと思って、やってきてるんだよ」
「なるほど……たしかに一理あるかもしれません」

「でしょ。その努力よりも、例えばスープとかサラダとかデザートとか、そういったものを強化したほうがインパクトがあると思うんだ」
「うん、うん、たしかにそうかも。分かりました。でもなぁ……何かなぁ……」
「何、何? 気になるじゃん。言ってよ」
「いえいえ、私も上手く言えないんです。でも、強いて言うなら、バランス感というか……うーん、お店の雰囲気・場所・接客・メニュー・商品・販促・看板の打ち出しなどなど、バランスが悪い感じがするんです。違和感っていうか……でも、それが何だか、まだ分からないっていうか……」

「なるほど、それはどうしたらスカッとするのかな?」
「う~ん、まだ何とも……」
 宇佐美は思わず苦笑いした。