動作→作業→オペレーション
「そろそろ出来ましたよ。どうします? 書きます?」
大沢が2人のやり取りに割って入ってきた。
「はい、では書き出してください」
こうしてそれぞれの店のアクションプランが出揃った。
「ありがとうございます。では進めましょう。どうですか? みなさん、ご意見を」
ホワイトボードに書かれたアクションプランに対して様々な意見が出てきたが、すぐに煮詰まってしまった。そんな様子に、待っていましたとばかりに昌一郎が口を開いた。
「みんなちょっといいかな。少し意見があってね。はるか、いいかな?」
「はい、どうぞ」
「まず吉祥寺店だが、チラシを撒くとあるが、具体的にどんなチラシを、どこに、誰が、どうやって、何枚撒くんだい? ただチラシを撒くと言ったって、これじゃ実際にどうやっていいのかわからないだろう?」
「はい、たしかに……」
大沢は下を向いてしまった。
「次に荻窪店。会社回りをして売り上げを上げるというのはわかった。でもさ、これも同じように、1日何件回るんだ? 誰が? 何時から何時まで?」
「あの……まだそこまでは……」
服部も言葉を濁した。
「では小金井店。子どもにおもちゃを配ってお客さんと会話するだけで、本当に60万円も売り上げが上がるのか? 月に60万円と言えば1日に2万円だ。1日2万円ということは客単価で割れば1日6人だよな。これだけで、毎日6人コンスタントにお客さんが増えるのか?」
「はい、多分……」
「多分? 本当にそう思うか?」
「いえ……」
今枝も黙ってしまった。
「最後に高円寺店。同じような内容だけど? 何か言いたいことは?」
「ありません。すみません……」
「うん、そういうことだ。動作の集まりが作業となり、作業の集まりがオペレーションになる。ふだん我々は逆から物事を見ているため、動作まで目がいかない。しかし、アクションプランというのは突き詰めれば動作なんだ。そこまで物事を落としていかなければ的確な行動はできない。
ましてや君たちはマネージャーだ。ということは、自分でやることが仕事ではない。もちろん今の規模では自分でやりながらにはなるが、基本的には部下に指示を出すことが主になるはずだ。
その時、こんな指示の出し方でいいのか?
『チラシを撒いてきてください』だけでいいのか?
『どのチラシを、どこで、何枚、何時間……』といった詳細な指示を出さなければ、指示されたほうはたまったものではない。どうすればいいかわからないじゃないか? 『具体的に・詳細に』ということはそういうことなんだ。はるかもわかるか?」
「はい、たしかにそうですね。そのとおりだと思います。みなさんどうですか? 再度トライしてもらえませんか?」
「難しいですね……でもやってみます。先に進まないですもんね」
服部は苦笑いしながら、髪を掻き上げた。