東京商工リサーチの調査によれば、2014年の新設法人は全国で11万9552社。一方、創業100年超の老舗企業は、約3万社しかない。企業は長期的に、淘汰の荒波に翻弄され続ける存在、と定義できるだろう。では生き残っている企業は何が違うのか。そのモデルケースが「リリカラ」だ。
明治時代に文房具屋からスタート
顧客ニーズに合わせて“脱皮”を繰り返す
リリカラはデザイン性が高い壁紙で知られる企業だ。日本の伝統文様「伊勢型紙」の壁紙「kioi」をつくるなど事業は挑戦的で、商品はホテルや飲食店などで使われることが多い。JASDAQ市場に上場しており、従業員数は459人、年商は約348億円(2014年)。「空間デザイナー御用達」という独自市場を持つことが何よりの強みだ。
だが、今回の「ヒット商品」は壁紙から少し離れた分野にある。オフィスやホテルや飲食店の内装リノベーションや、使用用途のコンバージョン(変換)を行う「スペースソリューション事業部」が急成長しているのだ。山田俊之社長が話す。
「オーナーのニーズが高いのです。東京オリンピックでのインバウンドニーズがあるため、オフィスビルがホテルにコンバージョンされた事例もあります。また、少子高齢化で病院が増えていますが、既存の建物を活用して設立された物件も多いんですよ」
理由は簡単だ。今、オリンピック特需などでゼネコンが忙しく、職人もいない。だから超大手ゼネコンは数億円規模の仕事には手を出さなくなり、建物をつくるのが難しくなった。しかも、リノベーションやコンバージョンで済めば、当然、ビルごと建て直すより安いのだ。
スペースソリューション事業部の稲垣治氏が話す。「たとえば、倉庫を最先端医療機器のショールームに改装した事例があります。非常に大がかりな機器なので、荷物用のエレベーターがあり、天井が高く、重い物が置ける頑丈な床を持つ『元倉庫』がうってつけだったのです。いらっしゃるのは医師の方なので、(元は倉庫であるにもかかわらず)レセプションはホテルのような雰囲気ですよ。そこは、弊社の元の事業領域ですから(笑)」
リリカラの創業は、明治40年(1907年)。初代社長が荒物雑貨店を創業し、おもに文房具を売った。その後、顧客に「家具も売ってよ」と言われたことが最初の転機になり、次の転機は昭和2年(1927年)、家具と一緒に襖紙、表装材料などを販売するようになったことだった。
同社の社史は、その後も「転機」ばかりだ。昭和30年(1955年)には、住宅の洋風化に伴い、「リリカラ」ブランドの壁紙の製造・卸を開始。その後、家具販売ではオフィス部門を新設し、法人向けのオフィス家具、事務機器類の販売を開始した。元々、オフィス需要があったのだが、これに特化した部門を作ったのだ。すると、次第に「図面を書いてよ」と言われるようになり、それが「スペースソリューション事業部」につながっていく。