フランス文化の影響が濃いアルゼンチンでは、舞踏のための音楽タンゴが生まれました。が、そこには濃厚な情念が宿っています。そして、彼の地にアストラ・ピアソラが誕生しました。1921年ダンスのための音楽を鑑賞に堪える一級の音楽へと昇華させました。

 ピアソラは二つの武器を持っていました。第1の武器が西欧と南米の結合です。西欧とは、古典音楽の粋を確実に消化・吸収して築き上げた洗練された和音と旋律。南米とは、ラプラタ川を擁するパンパスの大地が生んだリズム。

 第2の武器がアコーディオンに似た楽器・バンドネオンです。空気を供給する蛇腹の両側に、ピアノやオルガンのような長方形ではなく、小さく丸い釦の鍵盤があります。もともとは、屋外でパイプオルガンの代用として考案された楽器でした。ピアソラは、バンドネオン奏者でもありましたから、この楽器の特性を生かして胸を掻き毟るようなサウンドを生んだのです。

 しかし、そんな偉大なピアソラもある時期までは、知る人ぞ知る存在に留まっていました。現代チェロの第一人者であるヨーヨー・マが“リベルタンゴ”で真正面からピアソラ作品を取り上げたことでピアソラ人気が沸騰しました。

 マはクラシック界の貴公子的な存在でしたが、クラシック音楽の主要なチェロ作品を若くして制覇した後は、音楽的冒険家として、世界の様々な音楽に挑んでいます。マはピアソラ作品に惚れ込み、ピアソラのバンドネオン演奏の録音テープにオーバーダビングして“リベルタンゴ”を完成させました。故人ピアソラとの時を越えた競演が熱いです。その旋律こそ秋です。

哀愁の響きを宿す旋律
心の微妙な揺らぎに訴えかけるギター

◆サンタナ“君に捧げるサンバ”

 1969年8月、新しい時代の到来を告げた音楽の祭典がウッドストックです。そこで、鮮烈な印象を与え、メジャーデビューを飾ったサンタナが1970年に気合十分に発表したのが第2弾アルバム「天の守護神」(写真)です。この音盤はサンタナ初の全米1位を獲得した“ブラック・マジック・ウーマン”を収録し、緻密なアートそのもののアルバムジャケットであまりにも有名ですが、秋に聴くべき曲は“君に捧げるサンバ”です。