島根県はもともとラグビーが盛んではなく、だからこそ生まれた特殊なケースだが、予選参加数が少ない県はまだある。高知と佐賀は3校、香川は4校だ。予選参加数が奇数の場合は強豪がシードされるため、佐賀の佐賀工業(五郎丸歩選手の出身校)と高知の土佐塾高は決勝戦1試合の勝利で花園に出場した。高校野球も予選参加校数の減少傾向はあるが、それでも厳しい戦いが行われ、甲子園出場を決めた高校の選手は感涙を流す。しかし高校ラグビーではそんな光景が見られない県もあるのだ。

 もちろん高校ラグビーでも予選参加校数が多いうえに強豪がひしめき、厳しい予選を勝ち抜かないと全国大会に出場できない地域もある。少年ラグビースクールの活動が盛んな近畿圏、首都圏と福岡だ。そして実際、近年は全国大会で優勝するのはこの3地域の高校ばかりである。過去18年にわたって大阪、福岡、京都、東京の高校が優勝を独占している。少年ラグビースクールで幼い頃からラグビーに接し、順調に育って強豪校に入って、ハイレベルのプレーをするというルートがある地域なのだ(レベルが高いことから全国大会出場枠は大阪に3、東京に2、与えられている)。

 競技ピラミッドの底辺はもともと狭いうえに今、それはさらに狭まる一方。ごく限られた地域の数少ない才能に恵まれた選手がなんとか育ち、トップレベルになるのが日本なのである。

 こうした厳しい選手育成環境を考えると、南アフリカ代表から奪った日本代表の勝利は、まさに奇跡。改めてものすごい事を成し遂げたと思わざるをえない。

 今回の日本代表の快挙によって、日本の人々のラグビーを見る目は変わった。観て面白いし感動できるスポーツであることを知り、ファンも確実に増えた。

 少年ラグビースクールから中学、高校と続く選手育成環境を一朝一夕に良くすることはできないが、この変化をそうした表面に表れにくい部分までつなげていきたいものである。