「普通の温泉ではもの足りない」と感じるようになったら、本物の秘湯にチャレンジしてはいかがだろうか。秘湯入浴の魅力は、登山のそれに通じる。時には道なき道を、汗水流して歩いた末に得られる充実感。そして、大自然の中で味わう入浴の爽快感は秘湯ならでは、である。温泉研究家で、テレビ番組「TVチャンピオン」(かつてテレビ東京系列で放映)の温泉通で3連覇を達成した“温泉チャンピオン”の郡司勇氏にとっておきの秘湯を紹介してもらいました。
車で行ける入門者向けから、登山経験がないと到達が困難な熟練者向けまで20の秘湯をえりすぐった。行き方や徒歩時間は下表に書いたが、詳細な地図を用意し、インターネットで検索して先人が行った状況も参考にしてほしい。では、北から順に個性溢れる秘湯を紹介していこう。
北海道の川又温泉は登別の近くで、幌別炭鉱で知られた沢筋にある。透明な湯で、足元から大量に湧出し溢れて小川に。湯量豊富な野湯である。
ニセコには大湯沼があり、そこから沢を登ってゆくと小湯沼に着く。直径30㍍ほどの湯の池だ。中央は深いので要注意。白濁した湯で底には泥が大量に蓄積し素晴らしい。小湯沼から溢れた湯は馬場川になり、至る所に入浴できる場所がある。
東北地方の野湯、安比温泉はスキー場で有名な安比高原より林道を終点まで行き、さらに2時間半歩く。途中から沢登りになる。四角い浴槽が整備されており、ややぬるめの温泉だ。近くに草の湯もある。林道の終点から徒歩20分。沢全体が硫黄泉で、あちこちで入浴できる。
国見温泉は温泉宿で誰でも行ける。白い析出物と緑色の美しい珍湯だ。硫黄分も多く、国内でも屈指。宿は石塚旅館と森山荘、どちらも良い。
荒湯地獄へは鳴子温泉郷の鬼首温泉から林道を登る。一面の白い砂の地獄地帯に高温の湯が湧く。先人が造った浴槽群が各所にあり、適宜入浴できる。硫黄を含んだ酸性泉だ。蔵王かもしか温泉は、エコーラインの途中から沢に下ってゆく。急な沢の中腹にあり2、3の浴槽がある。野湯の楽しみがよく分かる温泉だ。
一本松温泉たつこの湯は乳頭温泉の黒湯から登山道を登っていく。白濁の硫黄泉で足元湧出である。黒湯から沢に下りたあちこちで湯が自噴しており入浴できる。奥奥八九郎温泉は、45度ほどのやや熱めの温泉がぼこぼこと湧出し、炭酸泉に多い析出物が周囲に蓄積してうろこ状になっている。含炭酸重炭酸土類泉であろう。近くに奥八九郎温泉や八九郎温泉もあり回ってみるのも楽しい。