全国の温泉巡りは楽しいが、実は都心でも可能だ。東京都には約650の銭湯があり、うち39湯が天然温泉。夫婦であちこちの湯を巡っている銭湯愛好家の渡辺秋男氏が都内の10の名湯を、また、温泉エッセイストの高橋一喜氏が関西街中の温泉銭湯を案内する。

 本稿では、東京都公衆浴場業生活衛生同業組合に加盟している、入浴料460円で楽しめる10の温泉銭湯を紹介しよう。

東京の温泉を460円で楽しむ <br />レトロやモダンの温泉銭湯浴場の壁に水槽が埋め込まれていて、中には多くの金魚が泳ぐ「改正湯」

 まずはオーソドックス系。「大田黒湯温泉 第二日の出」(大田区)は、阿部寛主演の映画「テルマエ・ロマエ」に出てくるような、富士山のペンキ絵、高い天井、趣のある縁側に庭と、昔懐かしの銭湯を感じさせる要素が勢ぞろい。天然温泉の黒湯で、体の芯からじんわりと温まる。

 上野池之端にある「六龍鉱泉」(台東区)は、下町の小道にひっそりと立つ老舗の黒湯銭湯。レトロな宮造りの風貌もさることながら、温度に個性がある。絶対に45度は下らない熱湯なのだ。

 近くにバックパッカーが利用する宿があり、銭湯を体験に来る多くの外国人観光客に出くわすが、毎度のようにお湯の熱さに仰天している姿を見掛け、思わず吹き出してしまいそうになる。

 温泉の醍醐味の一つ、露天風呂を味わいたいのなら「大黒湯」(墨田区)。広い露天風呂(男女湯日替わり)があり、透明な弱アルカリ性 メタケイ酸泉の温泉に漬かりながら、場所と角度によっては大きなスカイツリーを観賞できる。

 富士山の絵に、もう一味加えたのが、「改正湯」(大田区)。浴場の壁に大きな水槽が埋め込まれている。たくさんの金魚が元気よく泳ぐのを見ていると、時間があっという間に過ぎていく。白湯と黒湯、さらに炭酸ガスを溶け込ませた黒湯の炭酸泉がある。

美術館のような美しさや
岩盤浴ができる銭湯も

 一方、銭湯の既成概念を打ち破るスタイリッシュ系の一つが、「久松湯」(練馬区)である。2014年にリニューアルし近代的に生まれ変わった。

 外観やエントランスはまるで美術館のよう。通常ならペンキ絵となる壁は白く、夕方になるとプロジェクションマッピングが楽しめる。幾何学的な図形が生まれたり消えたり、または水が流れ落ちるような展開をしたりと、不思議な光の演出だ。泉質は、有馬温泉と同じナトリウム?塩化物強塩高張性中性温泉だ。

 今年5月にリニューアルオープンした「御谷湯」(墨田区)は、ビル型最新設備の銭湯。内装、調度品などは純和風のデザイン。2基のエレベーターで男湯、女湯それぞれ別の階にある浴室に向かう。

 絶妙に温度管理された良質の黒湯が楽しめる。1階には都内で唯一、身体障害者を対象にした福祉型家族風呂がある。