TPAの議会通過に際しては、上下両院で多数を占める共和党の指導部が共和党内の賛成派の票を取りまとめ、労働組合対策でTPPに反対する民主党の一部の賛成を経て、ギリギリで通過した経緯がある。しかし今回のTPPそのものの議会承認には、幾つかの大きな障害がある。

 第一には、議会で投票に至るまでの長いプロセスである。オバマ大統領は署名の意図を今月中に明らかにし、プロセスを始めると言われている。TPAでは署名に至るまでに協定自体を60日間公開することになっており、その上でオバマ大統領が来年初頭には署名をする。その後政府が議会に承認を求め、議会は90日以内に投票するということとなる。

 このような長いプロセスは、大統領候補者選びのプロセスと表裏一体となり、議員は選挙に向けての思惑に左右される度合いが強くなる。それが故に議会での投票をどの時期に設定するかは微妙な問題となる。場合によっては大統領選挙が終わるまで凍結されるだろうという見方もある。カナダでも10月19日に総選挙が行われ、与党は敗北したが、TPPが大きな争点となった。

鍵を握る共和党は混乱
反オバマの強硬派がTPP反対

 米国議会の承認には、共和党の賛成票が鍵となる。共和党はもともと自由貿易に積極的であるが、今回は容易ではない。これまで党内のとりまとめに中心的役割を果たしてきた下院議長ジョン・ベイナーは、茶会党など強硬派の突き上げを受け10月をもって辞職する意図を示しているが、後継となる有力な穏健派共和党議員の立候補者が現れておらず、党内は混乱している。

 党内で茶会党を含めた反オバマの強硬派は、TPPに反対を貫くと考えられる。また、新薬のデータ保護期間での妥協(米国は従来15年を主張してきたが8年で妥協したと言われている)に反発する製薬業界など、大企業の意向を汲み反対する共和党議員もいるのだろう。共和党指導部はこうした状況を勘案し、大筋合意されたTPP案は十分ではないという批判をしている。

 共和党の賛成票のとりまとめが容易でないもう一つの要因は、7月に成った米欧など6ヵ国とイランの核合意、およびその後の対イラン制裁解除である。合意は10月18日に発効し、今後米欧はイラン側が求める原油や金融などの制裁解除の手続きを進めることとなるが、共和党は当初から合意と制裁解除について強硬に反対をしている。

 大統領選挙を間近に控え、イラン核合意とTPPというオバマ大統領の二大成果を認めることへの反発は、共和党には大きいのかもしれない。