しかし、2012年の報告書からは、医療サービスの項目自体が削除されており、日本の医療サービスに外国資本の参入は要求されなくなっているのだ。そのかわりにボリュームを増してきているのが医療機器や医薬品の算定ルールへの注文で、アメリカの要求はこちらに軸足をずらしている。

 このように、国内的な財政事情、外国からの圧力のいずれからも、混合診療の全面解禁が行われる可能性は極めて低い。

 だからといって、国民が経済的な不安を抱えずに医療を受けられる制度がいつまでも続くとは限らない。

 今後、財務省の建議に記されていた受診時定額負担や免責制が導入されたり、製薬メーカーの言いなりになって医薬品の価格が高止まりしたままになれば、国民皆保険とは名ばかりで、お金がなくて医療にかかることを躊躇する人を増やすことになる。それは、とくに低所得層へのしわ寄せとなって現れるはずだ。

 混合診療問題にばかり目を奪われているうちに、国民皆保険の根幹を突き崩すような制度変更が行われてしまったら元も子もない。

「いつでも、どこでも、だれでも」安心して医療を受けられる医療制度を維持していくためには、陰謀論に惑わされず、本当の危機がどこにあるのかを正しく捕らえられる力が必要だ。