これまで見てきたように、医療費は巨額であるうえに、伸び率も高い。それは、医療費の負担に関する制度と関係があるのだろうか? もしあるなら、医療制度にいかなる改革が必要か?
公費負担率が高く、
患者負担率が低い
前回見たように、日本の医療費は、つぎのような特徴を持っている。
第1に、費用負担の特徴として、つぎの2点がある。
(1)公費が全財源の中で38.6%という大きな比重を占めている。
(2)患者の窓口負担(自己負担)率が11.9%と、低い。
第2に、支出の特徴として、高齢者の医療費が大きな比重を占めている(図表1参照)。しかも、伸び率も高い。
公費負担率が高く、患者負担率が低いのは、患者や医療関係者に本当の医療費を認識させない仕組みだ。これは、支出面の特徴である高齢者医療費比率の高さと関係があるだろうか?
これが、以下で考えたいと思う主要な問題である。
世代別の給付と負担には
差がある
医療費に関して上で述べたのは、全体の平均だ。受益と負担の関係を年齢別に見ると、かなりの差がある。この状況は、図表2に示すとおりだ。
20~59歳層については、医療費より「保険料および自己負担額」のほうが大きい。しかし、60歳以上になると、この関係が逆転し、医療費のほうが「保険料および自己負担額」より大きくなる。
70~79歳では、医療費が1人当たり年額65.5万円であるのに対し、「保険料および自己負担額」は13.2万円でしかない。自己負担は5万円と、医療費の7.6%でしかない。