日本のビールは世界でも珍しい歪んだ構造になっているのはご存じの通り。「ビールと呼べない紛い物」や「ビールっぽいがビールではない飲料」が、「ビール」と呼ばれて出回る世界で類を見ない市場だ。

 ビールの税金が高いため、節税に的を絞った「ビールもどき」が次々と生まれた結果でもある。メーカーは麦芽を抜いたり添加物に頼る「色水つくり」に熱心で、日本のビールはカラバゴス化の危機にある、とさえ言われる。

 そんな中で「今年こそ歪んだ税制の是正を」という動きが業界や自民党から上がり、年末の税制改革で「すっきり税制」になるはずだった。ところがマイナンバーカードによる消費税還付が頓挫したどさくさに紛れ、ビール税制の是正が消えてしまった。

 節税ビールでシェアを伸ばす「サントリーの策略」との憶測さえ広がるほど、業界は疑心暗鬼になっている。

サントリーが「抜け駆け」?
ビール税制改正をめぐる憶測

 首相の行動を記録する朝日新聞の「動静」。10月13日、こんな動きがあった。

「午後6時45分、東京・紀尾井町のホテルニューオータニ。同ホテル内の宴会場AZALEAでサントリーホールディングスの鳥居信吾副会長、新浪剛史社長と懇談。麻生太郎副総理兼財務大臣ら同席。7時52分、自宅」

 隅に載った数行の記事がビール業界を動揺させた。

「この微妙な時期に特定の会社のトップが首相に会うなんて、業界の申し合わせ違反ですよ」

 事情に詳しい業界関係者はそう語る。ビール業界(ビール酒造組合)は、税制改正の議論が行われている最中は、政治家や役所への働きかけは業界で一本化し、個別の面談などはしないことを申し合わせている、という。それが本当ならサントリーの動きは「抜け駆け」になる。

 新浪社長は経済財政諮問会議の委員も務め安倍首相と懇意の間柄だ。会って話をするのは不自然ではない。だが、今回は鳥居副会長も同席している。サントリー社長として会ったのだろう。麻生財務相も一緒だった。となると税制をめぐる陳情があったに違いない、と憶測が広がった。