哲人さんいわく、疑惑の的は「妻の元彼」。妻が哲人さんと知り合う前に彼と付き合っており、そして哲人さんと交際を始めたにもかかわらず、元彼とズルズル続いていたのだろうと。

 ところで哲人さんが首をかしげたのは血液型のせいだけではありませんでした。哲人さんには身の覚えがなかったのです。妻が出産した日から遡って10ヵ月前に性交渉をした覚えが。ちょうどその頃、哲人さんは仕事による過労のせいで心身ともに疲れ果てており、そのせいか一時的ですがED(勃起不全)気味だったようです。

 このように血液型の不一致やセックスレスという事情を踏まえれば、妻は妻で子どもの父親が夫(哲人さん)でないことは分かっていたはずです。もちろん、「婚約中なのに元彼と寝た」などと妻が正直にカミングアウトすることは期待できないでしょう。しかし、このままでは「他人の子を夫に育てさせる」という苦行を夫に強いることになるので、妻のなかに「子どもをあきらめる」という選択肢はなかったのでしょうか?

「妻はクリスチャンなので産むしかなかったようです」

 哲人さんの言うように、キリスト教のなかでもカトリックでは原則として中絶を禁じており、妻には宗教上の理由で「夫の子ではないからあきらめる」という道は存在しなかったのですが、それにしてもです。

 哲人さんによると妻は一緒にいる間も、頻繁に席を外したり、外に出たり、トイレに行ったりしており、必ず、携帯電話を手放さなかったので、哲人さんの目を盗んで「誰かと」電話やメール、LINEしていることは察しがついたそうです。そして「誰か」というのが元彼だということも。

「お父ちゃん」と慕う息子
仕事で遅くなる妻の本当の理由は……

 結局、結婚して同居してからも、出産してからも、妻の怪しい様子は何一つとして変わらなかったのです。いいかげん哲人さんも子の父親が「元彼ではないか」と勘づいていたのですが、それなのになぜ、妻に対して事の真偽を確かめなかったのでしょうか?哲人さんは当時の心境をこんなふうに振り返ってくれました。

「自分の子でなかったことがとてもショックで、そのとき離婚も考えたのは確かです。当時は口にしませんでしたが……しかし、子どもには罪はないですし、何だかかわいそうになり、結局は育てることにしました」

 息子さんはとても可愛い子で、哲人さんのことを「お父ちゃん」と慕ってくれたそうです。だから哲人さんも自分の子ではないのに「自分の子」だと自分に言い聞かせながら、何とか騙し騙し、育ててきたのです。そんなふうにずるずると6年間、限りなくクロに近いグレーな疑惑を晴らさないまま、その日を迎えてしまったのです。