森トラスト・ホテルズ&リゾーツが、米国の大手ホテル会社マリオット・インターナショナルとのフランチャイズ契約で、コートヤード・バイ・マリオット 新大阪ステーションを11月2日にオープンした。東京マリオットホテル(開業2013年12月)、コートヤード・バイ・マリオット 東京ステーション(同14年3月)に続いて3つ目のホテルである。同社は今年3月にも別の米国大手ホテル会社スターウッド・ホテル&リゾートと提携して最高級ホテルを京都に開業するなどの近年の積極投資が奏功して、親会社である森トラストのホテル関係事業の営業収益は前年比で15年3月期26%増、16年3月期は12%増の見通しである。伊達美和子社長に、ホテル戦略の要諦を聞いた。(聞き手:「ダイヤモンドQ」編集委員/大坪 亮)
──コートヤード・バイ・マリオット 新大阪ステーションは、どんなホテルで、どのような宿泊客を想定されていますか。
提携相手のマリオット・インターナショナルは、世界で会員約5000万人、ホテル数約4300軒、19のホテルブランドを展開しています。そのうちの1ブランドがコートヤード・バイ・マリオットで、世界の1000以上の都市で開業しています。一般向けで、フルサービスホテルというよりは、宿泊特化型ホテルに近いものです。
ビジネスパーソンが第一の対象顧客になりますが、新大阪駅近接で利便性の高い立地ですから、実際にはレジャーでのファミリーユースも相当の割合になると思います。ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)のアソシエイトホテルになっていて、その最寄り駅まで新大阪駅から電車で約16分なので、USJに行かれる方も多く泊まって頂けるかなと期待しています。
──ホテルのデザインコンセプト「ノマド(遊牧の)」はどういう意味ですか。
世界を旅する人が快適に泊まれ、リフレッシュできるホテルを目指します。IT機器を駆使していろいろな場所で仕事をするワークスタイルの「ノマドワーカー」を意識した館内設備で、落ち着いたモダンなデザインです。全館で無料Wi-Fiが利用でき、30平方メートル~90平方メートルの客室には、広めのライティングデスク、シモンズ製ベッドを設えています。
──2014年3月に開業したコートヤード・バイ・マリオット 東京ステーションは、もっと“尖がったデザイン”ですね。
主な想定顧客や設備等は同様ですが、コートヤード・バイ・マリオット 東京ステーションは銀座にも近い立地なので、おしゃれなシティライフの色合いをデザインで打ち出しています。コートヤード・バイ・マリオットとして中核にあるコンセプトは同じでも、立地に合わせた変化をつけています。コートヤード・バイ・マリオットであれば、世界中どこでも一定水準の設備やアメニティ、朝食では欧米人には欠かせないアイテムが提供されるということを保証しつつ、ローカライズされた各地の特徴も楽しんでもらうホテルなのです。
──予約状況での客室稼働率や平均客室単価(ADR)はどれ位ですか。
計画では稼働率85%としていますが、今年年末までは90%を越えそうです。ADRは今のところ2万5000円前後ですが、開業記念としてのお得な価格プランの提供が終了すると、もっと上がっていくと思います。
開業前からの予約では国内のお客様が多いのですが、開業後はマリオットグループのネットワークを通じて外国人のお客様の比率が高くなっていくので、ADRは上がっていくはずです。
──コートヤード・バイ・マリオット 東京ステーションの経験からの予測ですね。東京のほうは今、外国人利用率はどれくらいですか。
外国人比率は70~80%で、ほとんど欧米人です。一方、新大阪は開業3日段階で外国人比率は40%強ですが、開業前は30%。認知されていくにつれて、外国人比率が増えていく傾向です。意外だったのは、新大阪のほうは、お客様がインターネットや電話でホテルに直接予約される数が多いことです。大阪市場全体のホテル稼働率が高くて、新しく開業する当ホテルなら予約が取れるかもしれないと考えたお客様が多かったのかもしれません。
──外国人比率が高いのは、マリオットのネットワークで予約が入る比率が高いからですか。貴社は、ヒルトンやスターウッドなど他の米国大手とも提携してブランドホテルを複数展開していますが、ネットワークによる営業力などに違いはありますか。
(ヒルトンではコンラッドという最高級ホテルなど)それぞれの会社によって当社が展開しているブランドのグレードが異なるので、単純な比較はできません。
マリオットでは、最も対象顧客層が厚いグレード(中級から高級)のブランドホテルを3つですから、結果としてマリオットが他社よりも会員比率が多くなっています。そういうマス(マーケット)を対象にしたブランドホテルをマリオットとの提携では選びました。市場から必要とされている、そうしたグレードのホテルの数が日本では少ないからです。