そのフランスでは、「いつかホームレス状態に陥るのでは?」と思っている人が多数いて、増加中ということだ。「ホームレスは、社会に不安を与えます」とGirard氏は言う。日本の場合、多様な差別とバッシングの対象となる生活保護受給者が、フランスの「ホームレス」と同様の位置づけにあるのかもしれない。そのフランスでは、どのような対策が取られているのだろうか?

「フランスのホームレス対策費は年あたり30億ユーロ(約4000億円)で、英国に次いでEU圏内で2位です。この他に、普遍的な住宅扶助があります。『社会政策は予防、医療政策は治療』と呼ばれています」(Girard氏)

 そのフランスで、ハウジングファーストの取り組みが始まったのは2006年のことだ。民間の運動体から始まった動きだったが、2010年には国の政策にも取り入れられた。

「ホームレス状態の人は、深刻な精神症状があっても回復できます。何年も路上生活ができた人は、とても賢明なんです。だから生き延びられたわけです。精神症状が出ていても回復する力がありますし、『自分の住まい』を手に入れて維持する力もあります」(Girard氏)

 現在、フランスの4都市で、ハウジングファーストの効果を評価する調査が進行中だ。対象となりうる人々を半分に分け、片方にはハウジングファーストの考え方に基く支援、片方にはこれまでの通常の支援を提供し、結果を検討するというものだ。2011年に始まったこの調査の結果は、今年、2015年に判明する。

「『世界を変える夢を見る』で終わらないためには、科学的な裏付けが重要です。米国の『ハウジングファースト』が素晴らしかったのは、1990年代にデータを集め、コストを明確にしたことです。政策立案者が知りたいことは、コストです。そして、ブッシュ大統領がハウジングファーストを推進しました。ブッシュ大統領が、優しい人、人を助けたい人ではないことは、みんな知っています。でも、そうしました。我々の時も、サルコジ首相でした。ブッシュに似ていました。似た人、世界中にたくさんいます」(Girard氏)

 そして Girard 氏は、「日本の現在の首相は、ブッシュ大統領に似ています」と言って、会場を笑わせた。

 調査研究は、根拠に基く政策決定のために、極めて重要だ。たとえば「医療コストを減らしたい」という目的があるのならば、「コストを減らす効果がある」という確かな根拠のある政策を選択する必要がある。「なぜ成功するのか、なぜコストが削減できるのか」が判明していれば、応用や展開の可能性もある。フランスでの調査結果の判明が楽しみだ。

 次回は日本の話題に戻り、国の動き・賃貸住宅経営者たちの動きを紹介する予定だ。