2015年7月1日から、生活保護の家賃補助(住宅扶助)が引き下げられている。
この「低所得層の住」の根本にかかわる問題は、今、どのように「生活保護の住」に影響を与えているのだろうか?
今回は、生活保護の家賃補助減額に伴う影響について、賃貸住宅仲介に関わる不動産業者の経験と意見を紹介する。
低家賃でも“狭い物件”はダメ?
生活保護の住に新たなハードルが
「福祉のお客さん、生活保護のお客さんに賃貸のお部屋を紹介する仕事は、今までもやりづらかったです。7月からの住宅扶助引き下げで、さらに、やりづらくなりそうです」
東京都台東区内の不動産業者・Tさんは、淡々とした口調で、しかし、やりきれない表情を浮かべながら語る。一見「若々しく爽やかなサーファー」という印象のTさんは、3年前から、生活保護利用者への賃貸物件紹介にも取り組んでいる。主に対象としている地域は東京都と埼玉県。オフィスの立地から、山谷地域を含む台東区・荒川区での物件紹介も多い。路上生活からのアパート入居に関わることもある。
「一番気の毒なのは、お客さんです。以前から生活保護を受けている方の中にも、最悪の場合、住むところがなくなる方も出てくるかもしれません」(Tさん)
しばしば「DV被害から逃げてきた」「単身で、小さな子どもを抱えている」「高齢である」……といった問題を抱えている生活保護利用者たちは、物件探しで最初から不利な状況にある。
「アパートの契約には、身分証・携帯・緊急連絡先が必要です。一つでも欠けると、物件の半分はダメです。でも福祉の方は、身分証がなく、家族とも疎遠なことが多いんです」(Tさん)
生活保護を利用し始めてからの物件探しの場合、家賃として認められる上限額は住宅扶助で定められた金額(東京都の単身者で5万3700円)である。もちろん、生活保護を理由として入居を断られることもある。金額から、さらに「生活保護」という面から、選択肢が狭められる。
「どこの地域も、物件の7割以上は無理ですね。入居するには、管理会社・保証会社の審査を通し、さらに大家さんがOKする必要があります。大家さんが『福祉の方、お断り』だと、最初から無理なんです。台東区の場合、物件の9割は無理です」(Tさん)
なんとか見つかった住まいだが、狭く、家賃は安い。福祉事務所としては拒む理由はなさそうだ。
「でも実際には、管理会社・保証会社・大家さんともOK、もちろんご本人も希望というケースでも、ケースワーカーが許可しないので入居できない場合があります。『少しでも安い物件に誘導したいのかな?』という意図なのかと考えていましたが」(Tさん)