拡張主義に向かう中国の国内事情
覇権国への野望と経済の手詰まり感

 中国が南シナ海で人工島を建設し領有を主張することは、明らかに誤った行動で、国際法に照らして許容されるべきものではない。近隣の諸国から問題視されることは当然だ。

 同国がそうした強引な領土拡張主義に走る背景には、主に二つの要因がある。一つは、中国自身に将来、米国に代わって覇権国にのし上がりたいとの野望があると見られることだ。

 その野望を実現するために、自国が保有する軍事力=強い力を近隣諸国に見せつけることが重要になる。特に、中国自身の中長期的な安全保障を考えれば、可能な限り領土を広げておくことは極めて有効だ。

 現在の覇権国である米国が、中東やアフガニスタンに精力勢力を注いで、アジア地域に割けるパワーが低下していることは、中国にとって大きな好機と映るはずだ。そのチャンスを逃す手はない。

 もう一つは、高成長を続けてきた経済に手詰まり感が出ていることだ。リーマンショック前まで中国は、豊富な労働力と大規模な海外からの投資を基礎に“世界の工場”の地位を確固たるものにした。

 しかし、リーマンショックで世界経済が落ち込み、経済のエンジン役だった輸出の伸びには期待できにくくなった。当時の胡錦濤政権は4兆元の景気対策によって、成長率を押し上げた。

 ところが、その景気対策の効果が剥落してみると、残ったのは莫大な過剰生産能力だった。足元の中国経済は、過剰生産能力と過剰債務を抱えてかなり苦しい状況に追い込まれつつある。

 国内に多くの民族を抱える中国にとって、経済的なメリットを国民に分配できないと、不満が蓄積して政権を維持することも難しくなる。中国の友人の一人は、「経済的な富を手に入れられないと、誰も共産党政権について行く人はいなくなる」と指摘していた。