11月8日に投票が実施されたミャンマー総選挙では、野党の国民民主連盟(NLD)が勝利した。今回の総選挙は、1991年にノーベル平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チー党首のNLDが25年ぶりに参加したことで、国内外の注目を集めた。
25年前の1990年に軍事政権下で行われた総選挙では、NLDが過半数を得て勝利したものの、軍事政権は議会を招集しないで政権に居座り続けた。その軍事政権が民主化に舵を切って2010年に実施した前回の総選挙では、NLDがこれをボイコットしたことで、軍部を支持基盤とする連邦団結発展党(USDP)が勝利した。こうした経緯から、今回の総選挙はNLDが軍部およびUSDPと決着をつける戦いとなった。
選挙結果は20日に確定し、改選された491議席のうち、NLDが390議席を獲得したと選挙管理委員会が発表した。ミャンマーの選挙制度では、上下両院の定員は664議席であり、このうち4分の1の166議席が無投票で軍人議員に割り当てられる。NLDの390議席は、軍人議員を含む議会全体の過半数を上回る。
選挙結果を受けて、2016年1月末頃に議会が初招集される予定である。2月頃には全議員による選挙で大統領が選出され、新大統領の就任および組閣は3月頃の見込みである。NLDが議会の過半数を制したことから、順当にいけば大統領の選出と組閣はNLD主導で行われる。
ただし、憲法の規定により、配偶者と子どもが外国籍のスー・チーNLD党首は、大統領に就任できない。また組閣についても、国防相、国境相、内務相といった治安に関わる重要ポストは、大統領ではなく国軍司令官によって任命される。
大統領に就任できないことに関しては、スー・チー氏は与党の党首として大統領を通じて自らが政権運営を主導することに意欲を示す一方、こうしたスー・チー氏のやり方が非民主的な院政になりかねないとの批判的な見方もある。
治安に関わる閣僚が軍部によって任命されることに関しては、NLDの権限が治安政策に及ばない恐れがあるため、NLDにとっては軍部との協調体制を築くことが課題となる。大統領職や組閣制度を規定する憲法の改正については、国会の4分の3以上の賛成が必要であり、4分1を占める軍人議員が一枚岩である限りは不可能である。
こうしたスケジュールや陣容で政権交代が進められるなか、これまでも成長が期待される新興国の1つとして注目されてきたミャンマーの経済は、民主化によってさらに活性化するのだろうか。海外の企業や投資家にとっては気になるところだ。