紙おむつの材料である高吸水性樹脂で世界シェアの4分の1を握る日本触媒。ROAを重視して収益を堅実に積み上げるが、来るべき再編の可能性に備える節も垣間見える。(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)
吸水性抜群の紙おむつで笑顔を見せるのは赤ちゃんだけではない。紙おむつの材料を供給する中堅化学メーカーである日本触媒も、順調に拡大する紙おむつ市場ににんまりしているに違いない。
日本触媒は、1グラムで100~1000グラムもの水を吸い取ることができる機能性化学品の高吸水性樹脂を、その原料となる基礎化学品のアクリル酸から生産して紙おむつの主要メーカーに供給。高吸水性樹脂では、いまや世界シェアの4分の1を握るトップレベルの企業にのし上がった。
高吸水性樹脂とアクリル酸の売上高に占める割合は5割前後。利益の相当額を稼いでいる。日本触媒の成長と紙おむつの成長は、切っても切れない関係にあるのだ。
需要の増加に応じ、今春には3億5000万ユーロを投じ、ベルギーで高吸水性樹脂、アクリル酸の製造設備、各10万トンの増設、新設を決定するなど投資に余念がない。
そんな同社が経営指標として重視するのがROA(総資産利益率)だ。「設備を造り、世の中の役に立つ物をまっとうに作ることで、大もうけはしなくとも適切な利益を得る」(池田全徳社長)のが信条。
それだけに、借入金を増やして自己資本比率を下げれば高めることができる時流のROE(自己資本利益率)ではなく、自社の成長のために生産設備を増やすことを前提とし、利益獲得のために総資産をいかに効率的に回すか(=ROAの向上)に注視する。
差し当たってはこうしたROA重視の堅実経営を進め、2020年度に14年度の1.3倍超の売上高5000億円を目指す。ただ、中堅の域を出ない規模にはネックもある。中堅ではM&Aや研究開発などに投入できる資金に限りがある他、他企業から買収されるリスクも拭い切れないからだ。
競争がグローバル化する中、日本の中堅化学には生き残りをめぐって再編論議が付きまとう。池田社長も再編については「当然、頭の体操はしている」と語り、着実に蓄えた利益をジャンプアップに使う未来を否定しない。
では、同社の“結婚”にはどんなケースがあり得るのか。
一つは、成長の伸びしろがある高吸水性樹脂メーカーと再編して世界トップレベルの地位を強化するケースだ。中でも日本触媒に次ぐ国内生産能力を持つといわれる住友精化(12月1日時点の時価総額529億円)は筆頭株主がどちらも住友化学とあって、話し合いを進める“ルート”が十分にある。
確かに、国内の高吸水性樹脂は独占禁止法に引っ掛かる恐れがあるし、いくら住友化学と調整してもライバル企業がより良い条件で株を奪いにくる可能性も否めない。
しかし、住友精化は日本触媒とは違う生産方法を取っているため技術に魅力がある上、今後も需要の伸びが大きいアジアに強い紙おむつメーカーを最大顧客として持つとされ、再編メリットが大きい。