まず研究会が行ったのは、こんにゃくを食べる習慣がない海外で、どのようなこんにゃく料理が評価されるのかを調べることだった。そこで、主に中国、東南アジアからの県内在住の海外留学生を対象とした「嗜好調査」を実施した。

 会場にずらりと並んだ、こんにゃく料理を前に、とまどう留学生たち。研究会員として参加していた兵頭さんが振り返る。

「中国からの留学生の女の子が、『これはいったいなに?』と怪訝な顔でしょうゆ煮の玉こんにゃくをジーッと見つめてましてね。食べるか食べないか迷ったあげくに、しょうがないって意を決したような顔で食べてました」

 そこで、またしても兵藤さんは衝撃的な場面に遭遇する。

「すぐに吐き出しちゃいました」

 日本で一般的に食べられているみそおでん、刺身こんにゃく、玉こんにゃくが留学生たちにまったくウケなかったのだ。「こんにゃく、中国から日本にやってきた食べものなんですけどね……」と兵藤さんは話すが、中国でもこんにゃくを食べるのは南部のごくごく一部。ほとんど食べる習慣が残っていないのだ。

 ひどい目(?)にあった女子留学生いわく「プリプリして、まるくて、黒くて、しょうゆで煮た妙な味、気持ち悪いにおい、しかも温かい。こんなヘンなものは生まれてこのかた食べたことがない!」のがこんにゃく。

「とにかく食感は、外国の方には絶不評です」と群馬県農政部ぐんまブランド推進課の大井圭一さんが語る。

「どうも、世界的に、こんにゃくみたいな食感の食べものは存在しないらしいんですよ」

 わたしたち日本人が求めるあの「弾力」がありえなくて、さらには「それが温かい」が恐ろしくありえないことらしい。言われてみれば……類するものが思いつかない。

「においもダメみたいです。生臭く感じて、今度は魚だと思われがちなんです」と大井さん。しかし、こんにゃく麺はことのほか好評を博した。

「麺は海外でも一般的なものですし、これならプリプリも新たな食感として受け入れられるようです。こんにゃくをそのまんま持って行ってもなんだこれ、ってなりますけどね」

 大井さんが続ける。

「麺なら『食べもの』に見えますし」

 こんにゃくは、こんにゃくであることがどうのこうのという前にまずは世界中で「食べもの」として認識されるビジュアルが必要だったのだ。