日本企業初のIFRS(国際会計基準)適用会社が現れた。水晶デバイス大手の日本電波工業だ。
IFRSと日本基準とでどこが違うのか。表を見てほしい。
日本基準では、営業外収益・費用、特別利益・損失という項目がある。IFRSでは、これらの項目に含まれるもののうち受取利息など金融収益と支払利息など金融費用以外は、すべて営業利益の前の段階で収益として加えられるか費用として引かれる。
2010年3月期は営業利益の前の段階で受取和解金など10億0700万円が収益として加えられ、減損損失など18億0900万円が費用として引かれた。そのため、日本基準の場合と比べて、営業利益が8億7600万円少なくなり39億7900万円となった。
一方、これに金融収益・費用を加減した税金等調整前当期利益のほうは日本基準に比べて4億4900万円ふくらみ、43億0300万円となった。IFRSでは、新株引受権付き社債の計上基準が異なり、社債償還益が大きくふくらみ、金融収益が増加したためだ。
同社は02年3月期から海外向けアニュアルレポートでIFRSを採用している。昨年8月以降、財務部員のレベルアップのために週1回ペースで勉強会も重ねてきた。とはいえ、IFRS適用第1号の道は険しかった。
特に負荷がかかったのは、差異を示すために従来の日本基準の連結決算、さらに単独決算も作成しなければならなかった点。担当によっては「通常の3倍の負荷」(若林京一専務取締役)がかかったという。また、決算発表に当たり、東京証券取引所と短信の発表形式について何度もすり合わせ作業を要した。IFRSによる決算短信のひな型がまだないからである。
今後、適用企業が増加するなか、同社が経験した試行錯誤は多くの企業の範となるだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)