着々と進められる東方戦略
状況一変で中国との連携を強化

 プーチン大統領の東方戦略は、既にかなり長い時間をかけて着々と進められてきている。プーチン大統領は首相職にあった時代を含め頻繁に極東・東シベリアを訪問しており、2012年の大統領年次教書では「発展ベクトルは東にあり」、2013年の年次教書では「21世紀全体を通じての国家プロジェクト」と述べ、極東・東シベリアの開発に力を入れてきた。

 他方、中国への過度の依存を警戒する意識は強く、中国国境を一元的に管理する「東部軍管区」を2010年に創設し、軍事的備えは強化してきている。その対中関係が大きく動いたのは、ウクライナ・クリミア問題でロシアが孤立して以降のことである。2014年5月には中露首脳会談で10年以上まとまらなかった天然ガス供給契約に合意し、2015年は戦勝70周年で中露協調が演出された。

 また、本年5月の中露首脳会談では、ロシアの主導する「ユーラシア経済同盟」と中国の「一帯一路」構想のもとで、中露が連携していくことに合意した。中央アジアでは従来、安全保障面で大きな影響力を持つロシアと経済的な浸透を拡大してきた中国が連携することはあまり想定されていなかったが、ここに来て状況は一変した。このほか中露の間ではAIIB、BRICS銀行、上海協力機構を通じる協力関係も強化されてきている。

 このようなロシアの動きに神経を尖らせているのは米国である。プーチン大統領の対米対抗心は強いが、オバマ大統領の対露警戒心も極めて大きい。ロシアを軍事的存在として見、世界で米国に対抗できる軍事力を持つのは中国ではなく、ロシアであるという米国の意識は強い。

 ロシアの軍事予算は近年拡大の一途をたどっており、2005年比で2015年には5.87倍と、中国の3.64倍(平成27年度『日本の防衛』)を超える拡大ペースとなっている。核戦力ではロシアは米国に匹敵する戦力を持っている。本年3月に放送されたロシア国営テレビのドキュメンタリーで、クリミア併合で核兵器を使う用意があったとの趣旨の発言をしたことも警戒心を一層高める要因となっている。

 このような国際情勢の中で日露関係はどのように推移していくのだろうか。昨今の報道では安倍首相が来春ロシアの地方都市を訪問し、参議院選挙の後にプーチン大統領訪日を実現する検討に入ったと伝えられている。