「女性の貧困」というフレーズをよく聞くようになった。今の日本において、貧困に苦しむのは女性だけではないが、賃金格差や非正規雇用者の数、ひとり親になったときの貧困率などを見ると、若い女性が置かれている状況は確かに厳しいと感じる。そして、今貧困を感じていない女性でも、いつ貧困に陥るかわからないという恐さを感じている。20~30代女性の生の声を通じて、彼女たちの生活苦の実態に迫る。(取材・文/蒲田和歌 編集協力/プレスラボ)
日本はもはや豊かな国ではない?
女性たちが喘ぐ「生活苦」の実態
「最貧困女子」「失職女子」「高学歴女子の貧困」――。数年前から書店では「女子」と「貧困」を組み合わせたフレーズをよく見かけるようになった。とはいえもちろん、貧困は女子にだけ襲いかかっている現象ではない。今年の流行語大賞にノミネートされた「下流老人」「子どもの貧困」など、今や日本列島はどの年代、性別を見ても「貧困」から切り離せない状況となっている。
それでもまだ「貧困」と何らかのフレーズを組み合わせた言葉にインパクトがあるのは、「日本が豊かな国だ」というイメージを多くの人が持っているからかもしれない。しかし、貧困は我々の私生活に確実に忍び寄っている。
色々な指標を見ると、そうした現状が見て取れる。たとえば、日本は子どもの6人に1人が貧困と言われ、OECDの発表によれば子どもの相対的貧困率はOECD加盟国34ヵ国中10番目に高い。また、ひとり親世帯の子どもの相対的貧困率はOECD加盟国中最も高い。ひとり親家庭の貧困率は50%を超える。そして、日本の平均世帯所得は1994年の664.2万円をピークに下がり続けており、2013年は528.9万円となっている。
なかでも前述したように、若年層を中心とする女性の貧困は深刻だ。昨年1月にNHKで放送された「深刻化する“若年女性”の貧困」では、働く世代の単身女性のうち3分の1が年収114万円未満と報じられた。非正規職にしかつけず、仕事をかけ持ちしても充分な収入が得られないという状況だ。
しかし、我々にしてみると、周囲の女性たちから生活に関する深刻な苦労話を直接聞く機会は滅多にない。自分の生活苦を他人に相談することに対して「恥ずかしい」「プライドが許さない」と感じる女性が多いためだろう。こうした状況では、周囲が彼女たちの声にならないSOSに気づいて力になってあげることや、社会が抜本的な対策を講じることは難しい。
そこで今回、ダイヤモンド・オンラインでは、アンケート調査会社「リビジェン」の協力のもと、女性の「生活苦」に関する意識調査を行った。その調査結果を基に、彼女たちが抱える不安の裏側を考察したい。むろん限られた範囲での調査にはなるが、社会の一断面をのぞく上で参考になるはずだ。
本調査の対象は、全国の一般女性200人。世代の区分が難しいところだが、ここでは現在、貧困の増加が指摘されている若い女性のトレンドを重点的に見るために、企業の職場などで若手~中堅手前と見なされることが多い20代、30代を調査対象とした(回答者は20代98人、30代102人)。また、後述する調査結果のエピソードからもわかる通り、結婚をきっかけに生活苦に陥いる女性も少なくないと思われたことから、既婚・未婚の双方を調査対象にした。