「末は博士か大臣か」
そんな言葉で子どもの将来に期待を込めていた時代も今は昔。日本経済の低成長による雇用構造の変化は、リーマンショックや東日本大震災の影響も手伝って、高学歴プアと呼ばれる「高学歴・低収入」な人々を生み出した。一方で、ITを中心にした新しい産業では学歴よりも適性のあるなしが重視され、またホットスポット的に盛り上がる市場においては「低学歴・高収入」な人々、いわば低学歴リッチも目につくようになった。本稿では高学歴プアと低学歴リッチの実例を紹介しながら、このような逆転現象の背景に迫る。(取材・文/朽木誠一郎、編集協力/プレスラボ)
高級レストラン通いの低学歴リッチ(22歳)
奨学金返済にあえぐ高学歴プア(28歳)
学歴主義、年功序列は過去のものになりつつあるのか。
世帯年収が下がり続ける一方で、大学進学率は上がり続けている。少子化に伴い各大学は生徒集めに必死で、昔よりも大学に入りやすくなっているのは確かだろう。この状況の中で指摘され始めているのが「高学歴プア」の存在だ。今や有名大学や大学院を卒業しても、確かな雇用にありつけるわけではない。
高学歴プアの存在と対照的なのが、低学歴リッチたち。ITを中心とした新しい産業やベンチャー企業では学歴よりも適性のあるなし、即戦力が重視される。採用のあり方が多様化し、個人が企業との接点を持ちやすくなったことも低学歴リッチを生みだした理由の一つだろう。
高学歴プアと低学歴リッチ両方の存在から、一昔前には少なかった逆転現象の背景に迫ってみたい。
「大卒には負けていない」
テレビCMも流れる有名スマホゲームアプリの制作ディレクターのAさん(22歳男性)は、そう優越感をにじませる。高校中退後は職を転々としたが、知人のツテで入社したアプリの制作会社での仕事が自分の感覚にピッタリとはまった。入社2年目にはチームのリーダーを任されて、デザイナーやエンジニアの進行管理をするようになり、現在は自らもプランナーとしてゲームのキャラクターを考案することもある。月収は手取りで40万円超と、同世代がまだ学生をしていることを踏まえると、厚遇されているといえるだろう。国内ゲーム市場は活況で、2014年の調査では過去最高の1兆1925億円を記録している。