開沼 福島の海が汚染されたのは事実です。ただ、いまでもセシウムが検出される魚は、震災前から生きていて事故直後に原発付近の餌をたべたとか、明確な理由があるごくごく一部でしかない、ということが明確にわかってきている。にもかかわらず、あくまでも「全体がダメで、今後も危ない」かのように主張し、報道する。

 いや、これから大変な作業も残っているのは事実ですよ。デブリ取り出しとか作業環境の改善とか、まだまだ大きな課題です。こっちに残る課題をどうするか議論を盛り上げようというならわかります。ですが、そういう丁寧な取材が必要なことをせず、この的外れなことを針小棒大に話を盛りまくってでっち上げてウケ狙いしようとする浅はかな行為が、結局本来語るべき本質的な問題を先送りしてしまう。こういうことが5年たってもいまだ起こっていることこそが一番の問題です。

 竜田さんがおっしゃった雨水問題にしてもそうですけど、「福島めんどうくさい」化が進む中、悪しき相対主義というか、ニセ科学を両論併記の一方にのせて正当化してしまうような報じ方しかできなくなっているのも問題ですね。「なぜあんまり理解してないのにそんな適当な報じ方をしたんですか」という質問に対して返ってくるのは「福島のことを報じ続けるのが義務だから」「風化を防ぎたい」という答えです。ですが、デタラメ流すのは逆効果。それが風化を招いている。そもそも自分が触れている問題の基礎知識を報じている側が理解・判断ができていない。

――福島を取り巻く世論の変化をどうご覧になりますか?この5年で変わったことはあるのでしょうか。

竜田 正義を目的に福島を語って来た人は、いまでもあまりスタンスは変わっていないんじゃないですかね。最初からそこまでの主義主張がなくて、ふわっと正義に触れることを言ったりして最初のころはそっちの意見につられていた人が、冷静さを取り戻してきていることはあると思います。そういう人に対して「今の現場ではこうなんだよ」ということを伝えることは効果があるのではないかなと。

開沼 一時に比べればよくも悪くも落ち着きつつあるんじゃないでしょうか。ただ、風化と風評というキーワードがよく出てきていますが、多くの人は風化を懸念しますが、圧倒的に風評の問題の方がよほど大きくせり出してきていて、それによる誤認識が課題解決を遠ざけていることに気づいていない。福島の農家で話を伺うと「変な噂が流れ続けるくらいなら忘れてもらった方がいい」という方はとても多いです。