酪農についても、バターや脱脂粉乳などの加工原料乳の補給金制度の対象に生クリーム等向けも加えるという。しかし、生クリーム等は今回自由化されるわけではない。“焼け太り”である。154万トンの加工原料乳に加え、136万トンの生クリーム等向け生乳も、補給金の対象となる。財政支出は増加する。

 以上のほかにも、畜産には、様々な助成策が講じられ、何重ものセイフティネットが張り巡らされている。これほど至れり尽くせりの政策や助成があると、生産性を向上させて、コストを下げようとするインセンティブが生まれてくるはずがない。

温存された農政三悪人
どこが“農政新時代”?

 今回のTPP対策には、“農政新時代”というキャッチフレーズが付けられている。「輸出のため競争力をつけるのだ、飼料、肥料、機械などの生産資材の価格を見直すのだ、担い手を育成するのだ」という。

 しかし、減反・高米価政策、農協政策、農地政策という、これまで農業の発展を妨害してきた「三本柱」の政策にはメスが入らない。それどころか、減反のように悪政を強化しようとしている。

 トヨタでもキヤノンでも、良い製品を作ると同時に、1円でも安く売れるよう、価格競争力向上に日々努力している。輸出力をつけることを支援すると言っているのに、なぜ減反を強化して米価を上げるのだ。政策が矛盾している。

 資材価格の削減も必要だ。飼料、肥料、農薬、機械、全ての資材価格が、アメリカの倍もする。しかし、肥料で8割、農薬や機械で6割のシェアを持つ巨大な事業体である農協は、独占的な力を利用して、組合員に高い資材価格を押し付けてきた。農協を株式会社化して独占禁止法を適用しようとする改革は、頓挫した。高い資材価格が高い農産物価格を生み、農業の競争力を失わせている現状には、メスは入らない。

 担い手も重要だ。しかし、農家出身者でない若者が、親兄弟、友人に出資してもらい、ベンチャー株式会社を作って、農地を取得しようとしても、農地法はこれを認めない。

 これら農政三悪人には、怖くて手をつけられず、下っ端のような事業だけ見直して、なにが“農政新時代”か。

 TPP対策は、ウルグアイ・ラウンド対策と同様、影響がないのに行われる。自民党にとって、来年の参議院選挙を勝ち抜くためにも、農業対策は必要がなくてもやらねばならない。前回の公共事業へのバラマキに加え、今回は畜産へもバラマク。選挙対策である以上、バラまくのが最も効果的だからである。