この原稿がウエブに掲載される16日には、2015年における世界経済・金融の最大の課題であった米国の中央銀行FRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)による利上げがいよいよ実施され、イエレン議長から詳細や米国経済の評価も発表される予定である。
今年から来年にかけては、近年になく世界経済・金融に歴史的といっていいほどの重要なトピックが多い。とりわけ重要なのは、(1)米国の中央銀行FRBによる今後の利上げ、(2)日本の経済政策の成長戦略への転換、(3)中国の経済悪化の行方、(4)資源価格と新興国経済の低迷、の4つと考えている。この4つの課題を“軸”にして、分かりやすく2016年の世界経済の大きな流れを展望してみたい。
大きな流れをとらえると次のようになる。米国は利上げがあってもそれを乗り越える。日本は量的金融緩和に頼った政策から、経済成長を目指した政策に転換し経済はある程度好転する。中国は問題もあるが、財政出動や利下げの余地もあり中高速の成長は続ける。資源価格は特に供給サイドの問題で下落が続く。そして、新興国は中国と資源価格、そして米国利上げの影響を受け、以前のような高成長は期待しにくい。以下、テーマごとに見ていこう。
視点1:利上げ後も米国経済は力強さを維持
米国FRBが2015年12月15日~16日のFOMC(連邦公開市場委員会:Federal Open Market Committee)において、10年振りの利上げを実施する予定である。金融市場では、その先の利上げ継続の計画を織り込み(予想)つつある。現時点では、来年の利上げは3~4回を予想する。
米国は2008年9月に発生した世界金融危機「リーマンショック」への対応で、2008年11月から2015年11月まで7年間量的金融緩和政策を続けた。FRBは2015年11月に方向を転換し「正常化」に向かって量的金融緩和を終了し、徐々に資金量は減らしている。次は、金利の引き上げ(利上げ)ということは当然の流れである。
イエレン議長は失業率を重視しているが、今回の利上げの判断をするにあたって、雇用増加数など雇用の面は問題ないと判断をした。物価については、イエレン議長は賃金上昇率に注目している。これが上がれば景気は良くなり、物価は上昇すると考えているのだ。利上げは、米国内の金融市場や景気に対してネガティブな影響も想定されるが、十分な分析と確認の上で実施されると考えられる。