ダイヤモンド社刊
2310円(税込)

「自らの強み、仕事の仕方、価値観がわかっていれば、機会、職場、仕事について、私がやりましょう、私のやり方はこうです、こういうものにすべきです、他の組織や人との関係はこうなります、これこれの期間内にこれこれのことを仕上げます、と言えるようになる」(『明日を支配するもの』)

 これを言えることは、たいしたことではないかに思われる。しかし実際に言っている人は少ない。

 言いたくても言えないのである。なぜなら、自らの強み、仕事の仕方、価値観を知らないからである。

 自分についてなにも知らず、したがって「自分にとっての機会が何かもわからない」ということになる。それでは、ひとかどのキャリアは持てない。キャリアとは、日々積み上げていくべきものだからである。

 ドラッカー自身は、現代社会最高の哲人とされ、同時にマネジメントの父とされるに至った。両者に共通するべき強みとは何だったか。それは、社会生態学者としての能力、つまり社会を見て、意味ある変化を見極める能力だった。

 ドラッカーが、自分が見るために生まれた人間であることを自覚したのは、13歳のときである。

「最高のキャリアは、あらかじめ計画して手にできるものではない。自らの強み、仕事の仕方、価値観を知り、機会をつかむ用意をしたものだけが手にできる。なぜならば、自らの所を知ることによって、普通の人、単に有能なだけの働き者が、卓越した仕事を行えるようになるからである」(『明日を支配するもの』)