拠点型サ高住を重要施策として位置づけたのは
「大きな成果」

 3本の矢とは、(1)GDPの600兆円実現、(2)出生率1.8を達成、(3)介護離職ゼロ、である。

 介護離職ゼロは、かつての「寝たきりゼロ」や「待機児ゼロ」作戦にあやかったネーミングである。年間約10万人に上る家族介護を理由にした離職を追放しようということ。実現不可能なことは論を俟たない。「働き蜂」の育成を狙った発想ではあるものの、目標として鮮明に打ち出す試みは評価したい。

 妻や娘による介護だけでなく、最近では結婚した息子の実母介護や要介護の母と未婚や離婚した息子の二人暮らし家庭が広がっている。そこでは息子の離職が避けられないことも。企業にとっては、中堅幹部職が突然消えてしまうことになりかねない。経済成長を「盲目的に信仰」する政権としては、離職対策に乗り出すのは当然のことだろう。

 当初案では、その解決策が特別養護老人ホームの増設に偏っていた。同じ政権が、「地域包括ケア」を掲げて、施設から在宅への転換を目指そうとしている最中である。認知症をはじめ様々な障害を負っても、住み慣れた地域で暮らし続けましょう、というのが地域包括ケア。海外でも「Ageing in Place」として高齢者ケアの基本認識となっている。

 その地域包括ケアと矛盾すると反発を招いたこともあり、2週間後の「1億総活躍国民会議」では介護の受け皿を40万人分から急遽、50万人分に増やすとともに、サ高住の増大策を盛り込んだ。特養の増設だけでは、時計の針を逆転させかねなかった。

 決定された「1億総活躍社会・緊急対策」を見ると、「介護施設、在宅サービス、サ高住の整備量を(約38万人分から)約12万人分前倒し・上乗せし、約50万人分以上に拡大する」と記し、そのサ高住分だけは、2万人分と発表された。ほかの介護施設や在宅サービスの内訳数字は発表しなかったが、サ高住だけは実現目標値を明確に示した。

 さらに、別項目を設けて「サ高住の整備を加速させ、併設する地域拠点機能の整備も支援する」とある。

 この文意は、昨年4月に国交省の「サ高住の整備等のあり方に関する検討会」が提言した目玉事業、「拠点型サ高住」のことである。「併設する地域拠点機能」とは、小規模多機能型居宅介護(小規模型)と24時間の訪問介護看護、それに訪問診療(在宅療養支援診療所)、訪問看護の医療系を含めた4サービスを指す。これらのサービス事業者をサ高住に併設させるスタイルが「拠点型サ高住」なのである。

 国交省の知恵者が官邸に「忍び込み」、あわただしく進められた数値の見直し作業の中に巧みに加えてのだろうか。そんな冗談もさもありなんと思わせる画期的な仕業だ。とうのも、前日までサ高住については全く報じられていなかった。

 首相の指示で急遽、40万人が50万人に増えたため、多くのサービスをかき集めるなかで、本来は高齢者施設でなく集合住宅のサ高住にまでお呼びがかかったとも評される。だが、経緯はどうあれ、結果として前向きな方向に向かったのは評価していい。拠点型サ高住を政権の重要施策として明確に位置づけたのは「大きな成果」と言えるだろう。大歓迎である。

 拠点型サ高住が何故に重要な施策であるかについては、この連載の第31回で論及しているので、詳述は避けるが、日本の高齢者ケアの基本施策である「地域包括ケア」への道筋を切り開くことになる点を強調しておきたい。

 サ高住入居者にこれらの介護、医療4サービスを提供しつつ、周囲の地域住民にも同様の24時間サービスを供給する。先述の検討会で示された「サ高住のオープン化」である。4種のサービスの中で要となるのは小規模多機能型だろう。認知症ケアに優れているからだ。

 つまり、今後10年、20年先の高齢者介護の王道を行くサービススタイルになるのが「拠点型サ高住」である。