白人労働者層のハートをわしづかみ
「トランプ旋風」はなぜ起きたか
ドナルド・トランプ氏の勢いがとまらない。昨年末、CNNとORCが発表した世論調査では、米大統領選に向けた共和党の指名争いで、トランプ氏が支持率39%と、他の候補者に圧倒的な差をつけている。
イスラム教徒の入国禁止、メキシコとの国境に高い壁を建てろ、などなど政治生命を失いかねない放言を繰り返しているにもかかわらず、この強さの秘密はいったいどこにあるのか。
BBCは、トランプ氏の支持者は「年配で、より経済的に豊かではなく、より教育を受けていない層」だと分析。カナダのトロント・スター紙も、「右寄りの白人低所得者層で、現在の政治システムに裏切られたと感じている人々」としている。
近年、民主党に見切りをつけて共和党に流れ込む白人労働者層が増えており、彼らのハートをわしづかみにしていることが、トランプ旋風の正体だというわけだ。
有識者やアナリストらも同様の見立てで、この勢いは長く続かないと多くはみている。今は物珍しさで持ち上げられているが、実際の選挙戦が近づくと具体的な政策討論や実行力に注目が集まるので「飽きられる」らしい。
「そのとおり!」と膝を打つ人も多いかもしれないが、個人的にはこれらの分析をすべて鵜呑みにはできない、と思っている。
米メディアやインテリ層は当初、トランプ氏を「泡末候補」だと触れ回っていたという過去もさることながら、これらの論調が、すでになにかしらの政治的意図をもったスピンコントロール(情報操作)である可能性もあるからだ。
日本の選挙でも「空中戦」という言葉があるように、メディアを用いて対抗馬にネガティブな情報を流すというのは、どこの国でも変わらない。特にアメリカでは、ホワイトハウスのプレスルームを「スピンルーム」(情報操作の部屋)と呼ぶように、政治の世界では自らを利する「情報操作」「印象操作」を行うことは決して珍しくないのだ。