テレビ番組を利用して
破産寸前から見事復活

「マスコミについて私が学んだのは、彼らはいつも記事に飢えており、センセーショナルな話ほど受けるということだ。これはマスコミの性格上しかたのないことで、そのことについてとやかく言うつもりはない。要するに人と違ったり、少々出しゃばったり、大胆なことや物議をかもすようなことをすれば、マスコミがとりあげてくれるということだ」(トランプ自伝)

 トランプ氏ほど「宣伝」を不動産ビジネスにうまく利用してきた人物はいない。その代表は、今や世界最高のマンションといわれ、ニューヨークヤンキースのマー君も暮らしている「トランプ・タワー」だ。建設計画がもちあがった当初は多くのメディアや評論家は、付近の物件の相場と比較し、そんな高級物件に入居者がいるのかと懐疑的だったが、ふたをあけてみれば富裕層が大挙して押し寄せるほどの成功をおさめた。これは、トランプ氏が自分の知名度を逆手にとった宣伝によって「付加価値」を高めたからだといわれている。

 この得意の「ブランディング」は、自分自身にもむけられている。トランプ家を3世代にわたって考察した『The Trumps: Three Generations of Builders and a Presidential Candidate』の著者グエンダ・ブレアー氏も指摘している。

「究極的には、自分自身をブランド化することになる。『トランプ』というブランドが伝説になり、生身のトランプより大きくなることを意味する。その結果、ますます交渉力がつくことになる」

 このような「伝説化」に大きな役割を果たしたのが、2004年から続く人気リアリティ番組「ジ・アプレンティス」だ。

 一般人や各界のセレブが、トランプ氏の会社の見習い社員(アンプレンティス)となり、さまざまな課題にチャレンジしていくという番組で、毎回脱落者が出る。最後のひとりになれば年収25万ドルと、役員という立場を与えられる。ホスト役として出演するトランプ氏が、脱落者にかける「君はクビだ(You're fired!)」という決め台詞が流行語にもなったほどだ。

 実はこの番組が始まる10年ほど前、トランプ氏は多額の巨額借入金が災いし「破産」も囁かれるほどの窮地にたたされた。銀行からの支援などでなんとか息を吹き返したが、「トランプ」というブランドはかつてほどの輝きはなくなっていた。それがこのリアリティ番組によって完全復活したのである。

 もちろん、無能な野心家たちに容赦なく「クビ」を宣告する姿は、それまで以上にブランド価値を高めることにも役立った。アメリカで育ち、当時リアルタイムで「ジ・アプレンティス」を視聴していたタレントの西田ひかるさんはこのように述べている。