約12年に1度の周期で実施されることが多いマンションの大規模修繕。しかし、昨今の工事費高騰で積み立て不足に陥っている管理組合は数多い。解決のために知っておくべきポイントを解説する。

工事費は3年で3割アップ!
オリンピック前はさらなる上昇も

「管理会社から大規模修繕の見積もりを出してもらったら、積立金が2割も不足していることが分かったのですが…」。最近、マンション管理コンサルティング会社・さくら事務所でコンサルタントを務める土屋輝之氏の元には、こんな悲鳴のような電話がたくさんかかってくるという。

いざ管理会社から大規模修繕費用の見積もり金額が送られてきて仰天−−建設費用高騰に苦しむマンション管理組合は、どう行動すべきだろうか?

 約12年に1度のペースで行われることの多い、マンションの大規模修繕。住民から「管理費」を毎月徴収し、修繕費を積み立てるのだが、その修繕費が大幅に不足し、窮地に陥っている管理組合が続出しているのだ。

 原因は全国的な工事費高騰だ。東日本大震災の復興需要をきっかけに、長年低水準で推移していた全国の工事需要は増加に転じ、そこにアベノミクスによる景気回復、さらには東京五輪の開催準備などが加わったために、「2013年春を基準にすると、工事費は今、3割くらいは値上がっています」(さくら事務所の土屋氏)。

 大規模修繕はこれまで、一戸当たり100万円が相場と言われてきた。それが、一戸当たり130万円にまで工事費が上昇してしまっているのだ。04、05年頃のマンションブームに建設された物件が今、続々と大規模修繕の時期を迎えているが、数%ならまだしも、3割も上がってしまえばお手上げだ。

 足元は、工事費の値上がりカーブは少し緩んでいるものの、まったく安心はできない。18~19年頃は、国立競技場を筆頭に東京五輪関連施設の建設が佳境となる。「今でさえ、職人はもちろん、足場など資材の確保が厳しいのに、五輪関連の大型施設の工事が動き出せば、マンションの修繕工事を請け負う余裕が本当にあるのか」。建設業界関係者からは、こんな懸念の声が出ている。

 さらに管理組合を悩ませるのが、17年4月に実施予定の消費増税だ。前回の増税時(14年4月)には、大規模修繕はもちろん、新築マンションや戸建ての駆け込み建設ラッシュが起きた。しかし、次回の増税時には前述したような理由で、建設費がさらに高騰している可能性がある。果たして駆け込みをすべきか否か。管理組合は難しい決断を迫られることになる。