職場で電話対応をする社員の様子写真はイメージです Photo:PIXTA

近年も大企業の「粉飾決算」が後を絶たない。絶対やってはいけない不祥事のひとつであるが、実はかつて松下電器(現パナソニック)のある工場でも、粉飾決算が発覚したという。元松下電器CFO(最高財務責任者)の筆者が、トヨタ自動車との取引で驚いた話や、「経理の真髄」を語る。※本稿は、川上徹也『実践経営経理 君はまだ松下幸之助を知らない』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

後任者が気付いた
貸借対照表の異変

 乾電池事業部や灯器事業部といった事業部を統括する電池事業本部でいえば、この時代に、「業務点検制度」というものができました。簡単にいえば、各事業部の経理社員が、お互いを監査し合うものです。

 この制度ができたきっかけは、1966年に起きた「九州工場事件」でした。

 その乾電池事業部の九州工場では、経理担当が1人で人事・総務などの管理業務までも対応していたため、次第に作業が滞り、領収証などの書類の整理が追い付かなくなったようです。そしてそうした日々のちょっとしたミスも、長年にわたって積み重なると、処理できないほどの大問題になってしまうものです。

 後任者が引き継いだ際に、B/S(貸借対照表)と元帳の数字が合わず、調べてみる中で粉飾決算が発覚しました。裏付けのない資産が計上されるなど、前任の主任が数字を操作していたことがわかったのです。引き継ぎにより、ずさんな処理が繰り返されていたことが発覚したわけです。

 これはやはり、創業精神、すなわち遵奉すべき7精神「公明正大」に反する行為です。経理や財務の仕事にあたる人間にとって、最重要の項目です。