昨年12月、2016年度の薬価制度改革の骨子を示した厚生労働省 Photo by Hiroaki Miyahara

「理不尽極まりない。医薬品のイノベーションを阻害しかねない」──。

 製薬業界幹部のその憤りの矛先は、来年度の薬価改定案だ。

 厚生労働省は2015年末、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価専門部会に、「次期薬価制度改革の骨子(案)」を提示し、大筋で了承された。

 その中で、当初の予想よりも売れ過ぎた医薬品の薬価を引き下げる「市場拡大再算定」制度を、“巨額”品目にも拡大(特例再算定)させる仕組みを盛り込んだ。目的は増え続ける医療費の抑制だ。

 もちろん業界は反発一色。「予想を超えた大ヒット商品ほど大幅値引きということ。市場原理に反する」とは大手製薬幹部だ。

 これまでの市場拡大再算定の基準は、年間売り上げが150億円超(薬価ベース)で、かつ当初想定された売り上げの2倍以上の医薬品を対象に、薬価を最大25%引き下げるものだ。

 一方、このたびの改定案では、年間売り上げが1000億~1500億円で、かつ当初想定された売り上げの1.5倍以上の場合は最大25%。また、同1500億円超で、かつ当初想定された売り上げの1.3倍以上の場合は、最大50%も薬価を引き下げる。

「これまで十分に対応できなかった部分にメスを入れる。従来の制度の基準である売り上げ予想の2倍超になる大型薬はほとんどなく、形骸化していた」と厚労省幹部は言う。

 だが、この大型薬の狙い撃ちは、そのまま新薬メーカーの経営へのダメージとなる。