「こちらはほとんどしゃべっていないのに……なぜ?」と思うのだが、反芻してみてわかった。そんな時には意識せずに、いいタイミングで頷くのはもちろん、相手の話の内容を要約して繰り返したり、「ということは、こういうこともあるわけですね?」などと発展させていて、相手がそれに反応して「いや、そうなんだよ!」と身を乗り出してきたりしていたのだ。

 的確な相槌や感嘆、要約と感心、さらなる話の発展などで相手の気持ちを促し、さらなる情報を引き出し、気持ちに共感し、結果として相手から「勉強になった」と感謝される。これが本当のコミュニケーション上手だ。

 あるテレビ番組の対談で、プロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎さんから「今まで出会った多くの対談相手の中で、あなたが一番私を引き出してくれた」と評価してもらったことが私自身の大きな誇りだ。私は自分がしゃべることではなく、聞くことによって評価されたことを本当に嬉しく思っている。

 よくコーチングなどで傾聴力が大事だと言われる。私たちの指標にも傾聴力と書いてあるが、一般に言われる傾聴力とは少し意味が違う。一般的に言われる傾聴力は、「とりあえず黙って聞く」行為に力点が置かれる機能論だが、私が言いたい傾聴力は、聞くことによって、「とことん、自分を印象づけろ!」だ。

 聞いて、煽って、乗りに乗せて、相手をとことん楽しませて、結果として自分との会話が忘れられないひと時となるように演出する。これがコミュニケーション力としての傾聴力なのだ。

リーダーに必要な交渉スキルは
努力すれば身につけられる

 親密性/ユーモアはどうだろうか。親密性を増す方法は、このコーナーでも触れてきたと思うが、結局は「美点凝視」に尽きる。相手のいい点、優れた点に着目して、褒めること。自分のことに興味を持ち、肯定的に評価してくれる人間に反感を持つ者はいない。

 そしてユーモアだが、ユーモアのセンスを身に着けるのは難しいと思っている人が多いと思う。最終的には機転を利かせ、会話の瞬発力を高める必要があるが、一足飛びにその段階へ進むのは難しい。まずは地道に勉強して知識を増やしたほうがいい。本を読む、ネットサーフィンをする、さまざまな文化に親しむ……。

 おもしろい話をする人というのは、真剣に勉強をしているし、いろんな体験を自ら進んでしている。べたな努力だが落語を聴いたりジョーク集を読んだり、まずはそこからだ。注意しなくてはいけないのは、今はやりの芸人などはあまりにエッジが利きすぎていて、素人には役に立たないことがあるということだ。下手にマネなどすれば軽くて深みのない奴とむしろ反感を買うだろう。ここは古典に頼むのがいい。落語も古典をお勧めする。ユーモア、滑稽の真髄が見えてくるだろう。