英語力を身につけるだけではダメ
大切なのは仕事の成果を「見せる」こと
かつてシンガポールの元上司から受けた珠玉の言葉がある。
「Perception becomes reality」 (振る舞いや他人からの見え方が、実際の評価となる)
師走の誰もかれもが忙しい時期、自分のキャパシティを超える仕事に追われることも増えているだろう。そんな度を越えた忙しさのなかで、髪をふり乱しイライラしたオーラを放ちながら仕事をする人を時折見かけることがある。
そんな人を見かけたとき、冒頭で紹介した元上司の言葉を思い出してしまうのだ。たとえ仕事を成し得ても、「イライラ暗黒オーラ」によって評価はプラスマイナスゼロかマイナス評価になるであろうこと、そして仕事の評価が低い原因に気がつくこともないことが、不憫に思えてしまう。
この言葉は「イライラ暗黒オーラ」タイプの人だけに当てはまるのではない。きっちりとミスなく仕事をこなし、周囲からは「あまり目立たないけど仕事を任せて安心」と思われているタイプも同様だ。
人より沢山仕事をこなしているはずなのに、あまり目立たないために、他人から認識されている仕事量は人並み程度に見られてしまう「氷山の一角」タイプだ。このタイプの「海中の氷」部分が日の目を見るときは、その人が退職する際の引き継ぎのときしかない。そのとき初めて「この人はこんなに仕事をこなしてたいたのか!」と周囲に驚かれるのだ。
日本では、どちらのタイプのビジネスパーソンもごく一般的に存在するだけに、実にもったいない話だ。筆者が日本のビジネスパーソンを見ていて気づく典型的なケースは、「グローバル人材になるためにはとにもかくにも英語力が必要」とばかりに、会社で激務をこなしながら、こっそりプライベートな時間を使ってTOEICの勉強をしたり、英会話学校に通ったりする人が多いことだ。
むろん、ますます過熱するグローバル競争を行き抜くために英語力が必要になることは言うまでもないし、ビジネスパーソンは大いに勉強すべきだと思う。しかし中には、TOEICで高得点をとることが主な目的となってしまい、それが本当に仕事で自分の評価を高めることにつながっているかどうか、怪しい人も多いのではないか。重要なのは英語力を身につけることではなく、英語力を身につけたことを武器にしてどんな仕事を行ない、その成果をいかに周囲にアピールできるかだ。そうした視点を持たないと、単なる「TOEIC中毒者」で終わってしまい、周囲から正当に評価されることは望めないだろう。