野村マネジメント・スクールで教える
「資本コスト」の概念とは

佐藤 ケスター教授は長らく野村マネジメント・スクールでも教鞭をとられていますが、日本のエグゼクティブ講座では、どのようなことを教えているのですか。

ケスター 1998年から野村マネジメント・スクールでコーポレート・ファイナンスを教えています。授業を通じて、資本構成と資本コストについての基礎的な知識を身につけていただきたいと考えていますが、特に私がお伝えしたいのは、「資本にはコストがかかる」という点です。人件費や消耗品費と同じように、企業が資本を調達して、維持するためには、資本コスト(筆者注:株主への配当金や銀行への支払利息等)がかかるのです。

 これは私がこれまで教えていて気づいたことですが、日本企業の経営幹部の皆さんは全般的に「資本は、低利、あるいは、利子ゼロで維持できるものだ」と考える傾向にあります。「負債も株主資本も手に入れるまでは大変だが、いったん手に入れてしまえば、維持費などかからない」という前提でビジネスを考えている方々が非常に多いのです。

 そこで私の授業は、まず資本コストの概念を伝えることからはじめるようにしています。資本は手に入れるのは簡単だが、維持するのが難しいものなのです。実際、資本は、あるところには豊富にあります。儲けられるものにはある程度のリスクをとってでも投資したいと思っている投資家は世界中に山ほどいます。維持することのほうがずっと大変なのです。

 野村マネジメント・スクールで学んでいる日本企業のエグゼクティブは皆さん、優秀な方々ばかりですが、開発、製造管理、人事、マーケティングなど、財務以外の分野で活躍されてきた方々が大半です。入社以来、一度も財務の実務を経験することなく、経営幹部になられた方もいらっしゃいます。

 そういうエグゼクティブの方々に、ビジネスに対する新しい視点を与えられたらと願っています。どのようなビジネスが企業価値を上げて、何が企業価値を上げる決め手となるのかを財務の面から学び、今後、さらに経営幹部として活躍していただきたいと思っています。

佐藤 今年の夏も来日される予定ですか。

ケスター そのつもりです。7月に日本の皆さんにお目にかかれるのを楽しみにしています。