菅政権の経済と財政に関するスタンスが徐々に明らかになってきていますが、正直、危うさを感じざるを得ません。財政至上主義とも言えるくらいに、財政再建ばかりが優先されているからです。今週は、それで本当に日本経済は大丈夫なのかを考えてみたいと思います。
ヨーロッパと日本では経済の状況が違う
霞ヶ関から聞こえて来る話では、菅総理は財務大臣時代に、G7などの国際会議の場でギリシャと欧州の財政危機を巡る切迫した状況を肌身で感じ、財政再建の必要性を強く認識したようです。
もちろん、財政赤字と累積債務の水準を考えると、日本にとっても財政再建は不可欠であり、そのために消費税増税が不可避であることは間違いありません。しかし、世界的な“財政再建”ブームに乗っかって財政再建ばかりを優先した経済財政運営を行なうのは、考えものではないでしょうか。
それは、日本と欧州では経済の置かれた状況が大きく異なるからです。欧州経済と異なり、日本経済は15年も続くデフレに悩まされており、需給ギャップも20~25兆円程度とかなり大きいままです。
この需給ギャップをどう解消してデフレをいかに克服するかというマクロ経済運営戦略が不明確な中で、財政至上主義的に財政再建を優先しようとしたら、デフレからも脱却できず、税収も増えないので財政再建自体もうまくいかなくなる可能性が高いのではないでしょうか。