日本企業はグローバルマーケティングが苦手?

佐藤 ハーバードの何人かの教授が「歴史的に見ても日本企業は海外市場をターゲットとしたマーケティングが得意ではない」と指摘していました。日本企業はどうすればもっとうまく海外市場に進出できると思いますか。

チュン それは非常に本質的な質問ですね。繰り返しになりますが、日本企業が海外市場にそれほど注力してこなかったのは、国内に大きなマーケットがあって、それが成長し続けてきたからです。つまり、海外進出する必要がなかったからです。国内市場で成功すれば、それで十分、利益を出せていました。ところが、今、日本の国内市場は縮小しつつあります。

 多くの日本企業は国内市場でシェアをとることに没頭してきたため、それほど熱心に海外でブランドを確立しようとはしませんでした。日本製品は常に日本の顧客のニーズを第一に製造・開発され、海外顧客のニーズは二の次となっていました。それとは対照的だったのがシンガポール航空やサムスンといった企業です。これらの企業は国内市場があまりにも小さかったため、最初から海外市場を主要なターゲットとして、新製品を開発し、プロモーションしてきました。

 国内市場が縮小する中、日本企業、特に日本の航空会社は、最初から世界市場を狙う、ということをはじめるべきだと思います。

現在注目している企業は「サイバーダイン」

佐藤 現在、新たに教材にしてみたいと思っている日本企業はありますか。

チュン 今、茨城県つくば市にあるサイバーダインという日本企業のケースをちょうど執筆しています。サイバーダインは、ロボットスーツを開発・製造しているベンチャー企業です。私は今、「ビジネスマーケティングと営業」という選択科目を教えていますが、そこでこのケースを取り上げる予定です。

 サイバーダインのケースを書くために、2015年の夏、つくば市の本社を訪れ、サイバーダインスタジオも見学し、山海嘉之教授にもインタビューすることができました。これは非常に面白い企業だと思ったので、ケースにすることにしたのです。

佐藤 サイバーダインの事例では、どのようなことを教える予定ですか。

チュン まだケースが完成していないので、詳しく申し上げられないのですが、サイバーダインの米国進出をテーマにしたケースです。

佐藤 それは楽しみですね。アジア系企業のケースが足りないとおっしゃっていましたが、今後はさらにアジア系企業について研究する予定ですか。

チュン もちろんです。私はアジア人ですから(笑)。世界経済の成長を牽引しているのはアジアですし、面白い企業や事例もたくさんあります。私だけではなく、ハーバードの教員は皆、もっと日本企業を含むアジア系企業を研究したいと考えています。