金融政策の限界露呈と
世界経済の回復どちらが先か

 黒田総裁は、お金を運用する側のデメリットを甘受しても金利水準を引下げ、経済を刺激し物価目標を達成することを選択した。

 ただ、中国経済の減速鮮明化や、原油価格の下落に歯止めがかからない状況を考えると、黒田総裁が狙っている効果が短期間で顕在化するとは考えにくい。むしろ、主要国が抱える過剰生産能力からすれば、そう簡単に人々の心にインフレ期待が醸成される可能性は低いと見るべきだ。

 もちろん、黒田総裁はそうした状況を十分に理解していることは間違いない。総裁としては強気な姿勢を崩さず、様々な手立てを考案して時間を稼ぎ、その間に、世界の経済情勢が回復することを願っていることだろう。

 重要なポイントは時間=タイミングだ。実体経済に明るさが見えてくるタイミングが、金融政策の限界が露呈する前にやって来ればよいが、それが逆になった時、有効な対応策が見つからないことになりかねない。

 もう一つ、為替動向も重要だ。今まで円安傾向が進んでいたことは、わが国企業、特に大手企業にとって業績を改善する大きな福音だった。日銀も政府も、これからもできれば円安傾向を維持したいと考えているだろう。

 短期的に、為替動向に大きな影響を与えるのは金利水準だ。為替レートは、基本的に二通貨間の交換レートである。その場合、金利水準が高い通貨に需要が集まりやすい。金利10%と通貨と1%の通貨があるとすれば、多くの投資家は高金利の通貨を選考する可能性が高い。

 ドル・円の為替レートに考えると、ドルと円の金利差が大きな変動要因になるケースが多い。ドル金利が高くなる一方、円金利が低下すれば、ドルが買われやすく強含みになり、円が売られやすく弱含みになる可能性が高い。

 日銀のマイナス金利導入は、基本的に円安・ドル高の要因として働くことが考えられる。黒田総裁としても適度な円安を念頭に置いていることだろう。