南アフリカで開催されているサッカーワールドカップの決勝トーナメントにおいて、パラグアイを相手に善戦した日本代表だったが、惜しくも史上初の「8強入り」はならず――。しかし戦前の下馬評からすれば、これほどの快進撃は完全に想定外だった。当初は経済効果が疑問視されていたものの、W杯の注目度上昇に呼応するように、関連産業にも追い風が吹いている。足許で意外な盛り上がりを見せている「W杯特需」の波及効果を、改めて考察してみよう。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

ブレる無回転シュートで予選突破!
本田モデルのスパイクに問い合わせが殺到

 さながら魔球のようにブレるボールが、ゴールネットに突き刺さる――。それは、南アフリカ共和国で開催されているサッカーワールドカップ(以下、W杯)で起こった。1次リーグE組の対デンマーク戦において、日本代表のエース・本田圭佑選手が打ち込んだ「無回転フリーキック」は、相手選手の度肝を抜き、日本の予選突破を象徴する名シーンとして、ファンの目に強烈に焼きついた。

 しかし、このボールが「刺さった」のはゴールネットだけではなかった。翌日から、本田選手が履いていたスパイクについて、多くのファンや関係者から製造元のミズノに問い合わせが殺到しているのだ。

 チームの志気を高めるきっかけとなり、デンマーク戦の「勝利の扉」を開いたのは、確かに本田選手の無回転シュートに違いない。回転がかかっていなかったにもかかわらず、右に一度揺れてから左へ落ち込み、一瞬で相手ゴールを捉えたシュートは、メディアで「魔法のキック」と絶賛された。

 真偽のほどは定かではないが、この魔法のキックを生み出したのが、このとき彼が履いていた黄色いスパイクだという。実はこれ、あながち「単なる噂」とは言い切れない。ミズノが同社の契約選手でもある本田選手自身の監修を受け、回転を抑える新素材のパッドを新開発してでき上がったのが、この「無回転スパイク」だからだ。