日本銀行がマイナス金利政策の導入を決定した1月29日以降、それに関する見解をたくさんの金融市場関係者から聞いた。その多くが、日銀の今の姿勢に懐疑的だった。
第一に、今回の決定はサプライズ重視故に、金融機関や機関投資家の実務面の問題を軽視し過ぎているように思われる。急に言われても、制度上やシステム上の問題でマイナス金利への対応ができないという声は多数聞かれる。
欧州中央銀行(ECB)は2014年6月にマイナス金利政策を導入した。マリオ・ドラギ総裁は前年からたびたびその可能性を示唆し、14年2月にはブノワ・クーレ専務理事が「真剣に検討している」と発言。それらは事実上の予告であり、市場参加者がマイナス金利に対応できるように準備期間を設けていたと考えられる。
一方、ECBに比べると今回の日銀はあまりに乱暴である。2月16日から日銀当座預金の一部にマイナス金利が適用されるが、システムに入力できないと嘆く金融機関は多い。短期金融市場の取引は当面激減しそうだ。
コマーシャルペーパー(短期社債)を登録する証券保管振替機構(ほふり)のシステムもマイナス金利の発行は取り扱えない。日銀自身のシステムも実はマイナス金利に対応できていないようなのだ。
決定後2週間強で導入するのではなく、せめて「4月の準備預金積立期間からマイナス金利政策を開始する」といった発表の仕方もあったのではないかと思われる。
金融市場関係者から最近よく聞かれる第二の点は、これほど異常な金融政策まで実施してインフレ率2%を早期に達成しようとすることは、本当に正しいのだろうか、という疑問である。