2月12日、ドル円は110円台へ急落した。日銀のマイナス金利政策導入という追加緩和策の直後だっただけに、筆者はこのタイミングでの円高進行は全く読めていなかった。とは言え後述する通り、昨年後半から、2012年以降の長期ドル高円安が休止しており、足元で円高色が濃くなってきたことに大きな違和感はない。一方、そのことで長期的なドル高円安シナリオが根本から揺らいでいると考えているわけでもない。
米ドルは長期サイクルを繰り返す
現在は2017年頃までのドル高トレンド
筆者の認識では、2012年から3年続いた急激なドル高円安は、いわば、リーマン危機の後に生じた過度の円高の修正だった。だが、そうした修正局面が終わり、今や米ドルの動向がドル円の牽引役の地位に復帰しようとしている。
図表1は1970年代以降の長期的な米ドル指数の推移を示す。70年代前半に為替相場が変動相場制に移行して以降、過去、米ドル指数は概ね7~8年下落、2~3年底ばい、5~6年上昇というサイクルを繰り返してきた。
今回のサイクルでは、米ドル指数はITバブル崩壊を受けて2001年から長期下落基調を辿ったが、2008年リーマン危機の発生で下げ止まり、欧州ソブリン危機が深刻化した2011年に大底を打った兆しが見られた。そして2014年後半に進んだ著しいドル高で、米ドルが長期上昇トレンド入りしていたことが確認された。
通常5~6年上昇局面が続くことを考慮すると、今回の長期ドル高は最終的には2017年頃まで続く可能性が予感される。
2017年といえば、日本では8%から10%への消費再増税が予定されている年である。元財務官僚である黒田総裁率いる日銀が景気刺激のために再度、大規模な追加緩和に踏み切る可能性がある。米国ではFRB(米連銀)の金融引き締めがある程度は進展している公算が高く、その時に昨年つけた125円台の高値を超えるドル高円安になっても筆者は驚かない。いわば、2017年は長期的なドル高のサイクルと、長期的な円安のサイクルが一致する極めて重要な年になりそうだ。
◆図表1:米ドル通貨指数