兄と弟――。
血を分け合ったかけがえのない関係も、そこに他人が加わると、破綻することがある。利害関係が絡む会社ならば、その関係は一段と複雑になる。
連載22回目は、一族経営の会社で役員をしていた弟が、兄夫婦から壮絶ないじめを受け、排除されていく姿を紹介する。確執の程度やシチュエーションは異なるものの、推理小説『犬神家の一族』を彷彿とさせる。
あなたの職場にも、このような社員がいないだろうか。
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■今回の主人公――はい上がりつつある「負け組社員」
有田勇二(仮名・58歳)
愛知県の南部にある有田工業(社員数80人)に役員として勤務していた。カリスマ創業経営者の父が亡くなると、社長になった兄とその妻から役員を解任され、経験のない営業の仕事をするように命じられる。その後、兄夫婦の執拗ないじめを受け続け、強いストレスを抱える。
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(※プライバシー保護の観点から、この記事は取材した情報を一部デフォルメしています)
兄弟の確執に打ち勝ち、会社を私物化
行政まで牛耳ろうと目論む二代目社長
「秀雄が教育委員に選ばれた……」
有田工業社長の有田純一郎(63歳)が、大きな腹をさすりながら、20メートルほど先まで聞こえるような声で話す。わが息子がこの町の“実力者”になった喜びを、隠し切れないようだ。